この記事のポイント
- 横断歩道は歩行者が手厚く保護される場所で、車には高い注意義務が課される
- 青信号で横断中の歩行者は、車との事故でも過失が0に近くなりやすい
- 信号のない横断歩道でも、横断する歩行者の保護は厚く車側が不利になりやすい
- ただし歩行者の信号無視や直前の飛び出しなどがあると、歩行者にも過失がつくことがある
- 過失割合や賠償でもめたら弁護士への相談が有効
横断歩道での事故とは|なぜ起きるのか
歩行者が保護される場所での衝突
横断歩道での事故とは、横断歩道を渡っている歩行者と、進行してきた車とが衝突する事故です。横断歩道は歩行者が安全に道路を渡るための場所であり、車のドライバーには、横断歩道とその手前で歩行者の有無に細心の注意を払う義務が課されています。それだけに、事故が起きたときは車側の責任が重く問われやすい場所です。
典型的な場面はいくつかあります。第一に、信号のある横断歩道で、青信号で渡る歩行者に、右折・左折してきた車が衝突するケースです。ドライバーが対向車や歩行者の確認を怠ったときに起こりやすい事故です。
第二に、信号のない横断歩道で、渡ろうとする歩行者に、減速せずに進入してきた車が衝突するケースです。第三に、横断歩道の手前で停止した車のかげから歩行者が現れ、その横を追い越そうとした別の車と衝突するケースもあります。いずれも、車側の注意不足が背景にあります。
車には横断歩道での高い義務がある
道路交通法では、車は横断歩道に近づくとき、横断する歩行者がいないことが明らかな場合を除き、いつでも止まれる速度で進む必要があるとされています。そして、横断している歩行者や、渡ろうとしている歩行者がいるときは、横断歩道の手前で一時停止し、その通行を妨げてはなりません。
この義務があるため、横断歩道での事故は、原則として車側の過失が大きく評価されます。歩行者は交通弱者であり、横断歩道という保護された場所を渡っているのですから、基本的には手厚く保護されるという考え方です。
一方で、歩行者の側にも、信号を守る、安全を確認してから渡るといった最低限の注意は求められます。歩行者にこうした落ち度があった場合には、歩行者にも一定の過失が認められることがあります。次の章で、過失割合の考え方を具体的に見ていきます。
横断歩道での事故の過失割合
基本は歩行者が手厚く保護される
横断歩道での事故の過失割合は、歩行者が保護される場所であることを前提に考えられます。信号のある横断歩道を青信号で渡っていた歩行者が車にはねられた場合、歩行者の過失は0に近く、車側がほぼすべての責任を負うのが基本的な目安です。
信号のない横断歩道を横断中の歩行者と車の事故でも、歩行者保護の考え方は強く働きます。車には横断歩道の手前で歩行者に道を譲る義務があるため、車側の過失が大きく見られます。下の表は、状況ごとの考え方を整理した目安です。
| 状況 | 過失割合の考え方(目安) |
|---|---|
| 信号のある横断歩道を青信号で横断中 | 歩行者の過失は0に近い(車側が大半を負う) |
| 信号のない横断歩道を横断中 | 歩行者保護が厚く、車側の過失が大きい |
| 歩行者が赤信号で横断していた | 歩行者にも相応の過失がつく |
| 車のかげからの飛び出し・斜め横断 | 歩行者側の過失が加算されることがある |
これらはあくまで目安で、ケースにより変動します。信号の色、横断の態様、車の速度などによって個別に修正されます。
過失割合を動かす修正要素
基本の割合は、双方の事情によって修正されます。歩行者に不利に働く要素としては、赤信号での横断、横断歩道の直前での急な飛び出し、横断歩道を斜めに渡る行為などが挙げられます。これらは歩行者にも危険を避ける余地があったとして、過失を加算する方向に働きます。
逆に、車側に不利に働く要素もあります。制限速度を大きく超えていた、横断歩道の手前で減速・徐行する義務を怠った、わき見をしていたといった事情は、車側の過失をさらに重くします。横断歩道は減速して通過すべき場所だという前提があるためです。
夜間かどうか、歩行者が子どもや高齢者かどうかも、判断に影響することがあります。子どもや高齢者は、とっさの危険回避が難しい交通弱者として、より手厚く保護される傾向があります。こうした修正要素が積み重なって、最終的な割合が決まります。
歩行者の過失が0のときの注意点
自分の保険会社が示談を代行できない
横断歩道での事故では、歩行者の過失が0になることが少なくありません。このとき注意したいのが、被害者である歩行者自身の保険会社は、示談交渉を代行できないという点です。過失のない被害者に代わって保険会社が交渉すると、いわゆる非弁行為にあたるおそれがあるためです。
その結果、被害者本人が相手(加害者側)の保険会社と直接やりとりすることになります。交渉に慣れていない個人が専門の担当者を相手にするのは負担が大きく、知識の差から不利な条件で示談してしまうおそれがあります。
過失0は本来、被害者にとって有利な状況です。しかし、交渉の主体が自分になるという点では、かえって注意が必要になります。過失0だからこそ、交渉を専門家に任せる意義が大きい場面だといえます。
10対0になるケース・ならないケース
歩行者の過失が0、つまり10対0になりやすいのは、青信号で横断歩道を渡っていたなど、歩行者にまったく落ち度がない場合です。横断のルールを守っていたことが前提になります。
一方、歩行者が赤信号で渡っていた、横断歩道の外を渡っていた、車の直前に飛び出したといった事情があると、歩行者にも過失が認められ、10対0にはなりにくくなります。「歩行者だから必ず過失0」とは限らない点に注意が必要です。
判断の軸は、歩行者が横断のルールを守っていたか、車が回避できる状況だったか、という点にあります。過失0を主張したい場合は、これを客観的に裏づけられるかどうかが結論を左右します。
事故直後の対応と請求できる損害
その場でやるべきことと損害の概要
横断歩道で事故に遭ったら、まずは安全を確保し、けががあれば無理に動かず救急へ連絡します。続いて警察(110番)へ届け出て、交通事故証明書の基礎となる記録を残します。相手の連絡先・車両情報・保険会社を控え、信号の状態や横断歩道の位置関係を写真に残しておきましょう。
痛みが軽くても、その日のうちか翌日には整形外科を受診し、診断書をもらっておくことが大切です。受診が遅れると、事故とけがの関連を疑われ、賠償の対象にされにくくなることがあります。
請求できる損害は、治療費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料などです。後遺障害が残った場合の費目もありますが、詳細は専門的になるため概要にとどめます。慰謝料の算定基準には自賠責保険の基準・任意保険会社の基準・過去の裁判例をもとにした基準があり、裁判例をもとにした基準のほうが高くなる傾向がありますが、被害の程度により結果は変わります。
揉めやすいポイントと証拠の確保
横断歩道での事故で揉めやすいのは、信号の色や、歩行者がどこをどう渡っていたかという点です。車側が「歩行者が飛び出してきた」「赤信号だった」と主張し、歩行者側と食い違うことがあります。これによって過失割合が変わるため、双方とも引きにくくなります。
相手の保険会社は、自社の契約者に有利な前提で過失割合を提示してくることがあります。記憶だけの主張は水掛け論になりやすいため、客観的な証拠で事実関係を固めることが重要です。
決め手になるのが、車のドライブレコーダーや、現場周辺の防犯カメラの映像です。信号の色、歩行者の位置、車の速度を裏づけられます。映像は上書きされる前に早めに保全を依頼しましょう。あわせて、目撃者の証言や警察の実況見分の記録も有力な証拠になります。
横断歩道での事故でもめたら
過失割合・賠償は弁護士に相談
横断歩道での事故は、歩行者が保護されやすい一方で、信号の色や横断の態様をめぐって主張が対立しやすい類型です。とくに歩行者の過失が0で、保険会社の示談代行が使えないケースでは、当事者だけの交渉は負担が大きく、不利になりがちです。
提示された過失割合や賠償額に納得できないときは、交通事故にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。映像などの証拠をもとに、適正な過失割合と賠償の見通しを確認したうえで対応を決めれば、不利な示談を避けやすくなります。