交通事故発生時の対応マニュアル

人身事故の違反点数|付加点数の仕組みと免許への影響

人身事故の違反点数|付加点数の仕組みと免許への影響

この記事のポイント

  • 人身事故の違反点数は「基礎点数」+「付加点数」で決まり、付加点数はケガの程度で変わる
  • 付加点数は、被害が重いほど、また加害者の不注意が専らの原因であるほど大きくなる
  • 累積点数が一定に達すると免許停止や取消につながるが、これは行政処分で賠償とは別の話
  • 被害者は加害者の処分の見込みを知っておくと、示談や処罰感情の整理に役立つ
  • 賠償(民事)で困ったら、行政処分とは切り分けて弁護士に相談するのが有効

人身事故の違反点数とは

点数制度のなかでの位置づけ

交通事故でケガ人が出る人身事故を起こすと、加害者には刑事責任や民事の賠償責任とは別に、運転免許に関する行政処分が科されます。その中心になるのが違反点数の制度です。点数が一定以上たまると、免許の停止や取消といった不利益につながります。

人身事故の違反点数は、大きく「基礎点数」と「付加点数」の二つから成り立っています。基礎点数は信号無視や速度超過といった違反そのものに付く点数で、付加点数は人を死傷させた結果に対して上乗せされる点数です。人身事故では、この二つが合算されて最終的な点数が決まります。

被害者の立場では点数そのものに直接関わることは多くありませんが、加害者がどの程度の処分を受けるのかを知っておくと、相手の態度や示談交渉の見通しを理解しやすくなります。まずは仕組みを押さえておきましょう。

付加点数は「被害の程度」と「不注意の度合い」で変わる

付加点数の特徴は、被害が重いほど大きくなる点です。死亡事故がもっとも重く、ケガの治療期間が長いほど点数も高くなります。被害者の負傷の程度が、そのまま加害者の処分の重さに反映される仕組みになっています。

もう一つの軸が、その事故が「専ら加害者の不注意によって起きたか」という点です。同じ被害の程度でも、加害者の不注意が主な原因と評価される場合は付加点数が大きく、被害者側にも一定の落ち度があった場合はやや小さくなる、という形で幅があります。

このため、同じ「全治1か月のケガ」でも、事故の状況によって付加点数には差が出ます。点数は機械的に一つに決まるのではなく、被害の重さと過失の状況をふまえた目安として運用されている、と理解しておくとよいでしょう。

被害の程度別の付加点数の目安

治療期間ごとの点数

人身事故の付加点数は、被害者のケガの治療期間や結果に応じて、おおよその目安が定められています。下の表は、その目安を整理したものです。実際には事故の状況によって幅があり、ケースにより変動します。

人身事故の付加点数の目安(被害の程度別)
被害の程度 付加点数の目安
死亡 13~20点
治療3か月以上、または後遺障害が残った 9~13点
治療30日以上3か月未満 6~9点
治療15日以上30日未満 4~6点
治療15日未満 2~3点

表の中で点数に幅があるのは、前述のとおり「専ら加害者の不注意によるものか」で上下するためです。加害者の不注意が主な原因とされれば上限に近づき、そうでなければ下限寄りになる、というイメージです。

これらはあくまで付加点数であり、人身事故では信号無視や速度超過といった基礎点数がさらに加算されます。最終的な点数は、付加点数と基礎点数を合わせて判断されます。

基礎点数が上乗せされる

基礎点数は、事故の原因となった違反そのものに付く点数です。たとえば信号無視や一時不停止、speed超過といった違反があれば、その点数が付加点数に上乗せされます。悪質な違反ほど基礎点数も大きくなります。

そのため、被害の程度が同じでも、事故に至るまでの運転の悪質さによって合計点数は変わってきます。安全運転義務違反のような基本的な違反でも点数は付きますし、飲酒運転など重い違反が絡めば点数は一気に大きくなります。

被害者としては、相手がどのような違反をしていたかが、加害者の処分の重さに影響することを知っておくと、事故状況の整理に役立ちます。違反の内容は実況見分や捜査の中で確認されていきます。

累積点数と免許への影響

点数がたまると免停・取消につながる

人身事故で付いた点数は、過去の点数と合算され、累積点数として扱われます。前歴がない場合の目安として、累積6~8点で30日の免許停止、9~11点で60日、12~14点で90日、15点以上で免許取消(一定の欠格期間を伴う)といった段階があります。

前歴がある人は、より少ない点数で停止や取消になります。過去に処分を受けたことがあるかどうかで、同じ点数でも結果が変わる仕組みです。免許停止の場合、停止処分者講習を受けることで停止期間が短縮されることがあります。

重い人身事故では、付加点数と基礎点数の合計だけで一気に取消水準に達することもあります。加害者にとっては生活に直結する重い処分であり、これが示談に前向きになる動機の一つになることもあります。

免許取消と欠格期間

累積点数が15点以上になると免許取消となり、一定の欠格期間が定められます。欠格期間とは、その間は新たに免許を取り直せない期間のことで、点数や前歴に応じて1年から段階的に長くなります。死亡事故やひき逃げなど重大なケースでは、欠格期間が大きく延びることもあります。

免許停止の場合は、停止処分者講習を受けることで停止期間が短縮されることがあります。一方、取消になると講習による短縮ではなく、欠格期間の経過を待って改めて取得し直す必要があります。停止と取消では、その後の影響の重さが大きく異なります。

これらは加害者側に科される行政処分であり、被害者が手続きに関わるものではありません。ただし、相手がどの程度の処分を受ける見込みかを知っておくと、相手の対応の背景を理解する手がかりになります。あくまで賠償とは別の話として、参考として押さえておくとよいでしょう。

違反点数と賠償は別物

行政処分が重くても賠償が増えるわけではない

被害者がよく誤解しやすいのが、「加害者の点数が重ければ、その分自分が受け取る賠償も増える」という考えです。しかし、違反点数は免許に関する行政処分であり、被害者への損害賠償(民事)とは制度上まったく別のものです。

加害者が免許取消になったとしても、それによって被害者の慰謝料や治療費が自動的に増えるわけではありません。賠償の金額は、ケガの程度や治療内容、過失割合などをもとに、民事のルールで別に算定されます。点数の重さと賠償額は連動しないと理解しておきましょう。

ただし、加害者の違反が悪質だったという事実は、事故状況の評価や交渉の場面で間接的に意味を持つことはあります。点数そのものではなく、その背景にある運転の態様が、過失割合や慰謝料の検討材料になることがあるという整理です。

被害者が処分について知っておく意味

被害者が加害者の処分の見込みを知っておくことには、いくつかの実益があります。まず、相手がどの程度の行政処分を受けるかが分かると、相手が示談を急ぐ理由や態度の背景を理解しやすくなります。

また、行政処分・刑事処分・民事の賠償がそれぞれ別物だと整理できていれば、相手から「処分を軽くしたいので示談してほしい」と求められたときにも、賠償の条件を冷静に検討できます。処分のために賠償で譲りすぎてしまう事態を避けられます。

一方で、点数や行政処分の手続きは加害者側の問題であり、被害者が直接コントロールできるものではありません。被害者は自分の賠償に集中し、処分の話とは切り分けて考えることが大切です。

人身事故の賠償で困ったら

行政処分とは切り分けて弁護士に相談

人身事故の違反点数や行政処分は加害者側の問題であり、被害者が受け取る賠償とは別の制度です。被害者にとって重要なのは、ケガに見合った治療費や慰謝料などの賠償を、適正に受け取ることです。

相手保険会社から提示された過失割合や賠償額に納得できないとき、治療費の打ち切りを打診されたときなどは、交通事故にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。行政処分の話に振り回されず、自分の賠償の見通しを確認したうえで対応を決めるとよいでしょう。