交通事故発生時の対応マニュアル

当て逃げ被害の対応マニュアル|後日気づいた場合・駐車場での被害も解説

当て逃げ被害の対応マニュアル|後日気づいた場合・駐車場での被害も解説

駐車場に戻ったら車に傷がついていた、走行中に何かにぶつけられたのに相手はそのまま走り去ってしまった。当て逃げの被害に遭うと、「犯人は見つかるのか」「修理代は誰が払うのか」と不安になるものです。やり場のない気持ちのまま、泣き寝入りしてしまう方も少なくありません。

しかし、被害直後の行動次第で、その後の展開は大きく変わります。この記事では、当て逃げされたときにまずやるべきこと、警察の捜査でどこまで犯人が特定されるのか、使える保険、後日気づいた場合の対応までを、被害者の立場から整理して解説します。

当て逃げとは

当て逃げとは、車や物にぶつかって損害を与えたにもかかわらず、必要な措置をとらずにその場を立ち去る行為を指します。「当て逃げ」という名前の罪があるわけではなく、道路交通法上の義務に違反した状態をまとめてこう呼んでいます。

交通事故を起こした運転者には、道路交通法によって主に次の2つの義務が課されています。

  • 危険防止措置義務……車を安全な場所に止め、二次的な事故を防ぐ措置をとる義務
  • 報告義務……事故が起きたことを警察官に報告する義務

人にケガがなく、物だけが壊れた事故(物損事故)でこれらの義務を怠って逃げた場合が、いわゆる「当て逃げ」です。人がケガをしているのに逃げた場合は「ひき逃げ」となり、より重く扱われます。

当て逃げされたらまずやるべきこと

被害に気づいたら、落ち着いて次の手順で対応しましょう。後の捜査や保険請求のために、記録を残すことが何より重要です。

1. その場の状況を記録する

まずは被害の状況をスマートフォンなどで撮影します。傷やへこみの部分はもちろん、車全体、周囲の路面、駐車位置など、できるだけ多くの角度から残しておきましょう。相手の車の破片や塗料が付着していることもあり、これらは犯人特定の手がかりになります。

2. 警察に通報する

当て逃げは被害者であっても必ず警察に届け出ましょう。届け出ることで「交通事故証明書」が発行され、これは保険を使う際に必要になります。届け出をしていないと、後から保険会社に被害を証明できず、補償を受けられないおそれがあります。

事件性のある被害として「被害届」を提出することも検討します。被害届の出し方については、別の記事でくわしく解説しています。

3. 目撃者・防犯カメラを探す

周囲に目撃者がいないか確認し、いれば連絡先を教えてもらいます。また、駐車場やコンビニ、住宅などの防犯カメラ、近くを走っていた車のドライブレコーダーに、当て逃げの瞬間や相手の車のナンバーが映っている可能性があります。映像は時間が経つと上書きされてしまうため、早めに管理者へ保存を依頼することが大切です。

4. 保険会社へ連絡する

加入している自動車保険の会社にも早めに連絡します。使える補償の有無や、修理の手続きについて案内を受けられます。

警察は当て逃げをどこまで調べてくれるのか

当て逃げの被害届を出すと、警察は事故の記録を残し、状況に応じて捜査を行います。ただし、現実には人身被害のないケースで大がかりな捜査が行われることは多くありません。防犯カメラの映像や目撃情報など、犯人につながる手がかりが乏しい場合、特定に至らないことも珍しくないのが実情です。

だからこそ、被害者側が集められる証拠をできる限り早く確保しておくことが、犯人特定の可能性を高めるうえで重要になります。ナンバーの一部だけでも覚えていれば、有力な手がかりになります。

犯人が見つかった場合・見つからない場合の補償の違い

当て逃げの修理代を誰が負担するかは、犯人が特定できたかどうかで大きく変わります。

状況修理代の負担
犯人が特定できた相手に損害賠償を請求できる。相手の対物賠償保険から支払われるのが一般的
犯人が特定できない相手に請求できないため、自分の車両保険などを使って修理することになる

犯人が見つからなければ、自分の保険でまかなうほかありません。そのため、当て逃げに備えてどんな保険が使えるのかを知っておくことが大切です。

当て逃げで使える保険

当て逃げの被害で使える可能性があるのは、主に自分が加入している車両保険です。補償の範囲は契約のタイプによって異なります。

  • 一般型(フルカバー型)の車両保険……当て逃げによる損害も補償の対象になるのが一般的です。
  • 限定型(エコノミー型)の車両保険……当て逃げが補償の対象外となっていることが多く、注意が必要です。

ただし、車両保険を使うと等級が下がり、翌年以降の保険料が上がる点には注意が必要です。修理費用と保険料の上昇額を比べて、保険を使うかどうかを判断するとよいでしょう。なお、犯人が特定できて相手の保険から賠償される場合は、自分の等級には影響しません。

契約内容によっては、当て逃げの場合に保険料の負担を抑えられる特約が付いていることもあります。自分の契約でどこまで補償されるかは、保険証券や保険会社への確認で把握しておきましょう。

後日「当て逃げされていた」と気づいた場合

「駐車場に止めていたら、いつの間にか傷がついていた」というように、後日になって被害に気づくケースもあります。この場合でも、気づいた時点で警察に届け出ることが大切です。

時間が経つほど、いつ・どこで傷がついたのかの特定は難しくなり、防犯カメラの映像も残っていない可能性が高くなります。それでも、被害を届け出て記録を残しておくことで、車両保険を使う際の手続きがスムーズになります。傷を見つけたら、修理や洗車をする前に撮影し、まずは警察に相談しましょう。

駐車場での当て逃げの注意点

当て逃げの被害は、商業施設やコインパーキングなどの駐車場で起きることが多くあります。駐車場でのトラブルには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。

  • 施設の防犯カメラに映像が残っていることがあるため、施設の管理者に保存と確認を依頼する。
  • 私有地である駐車場内の事故でも、警察への届け出は可能。交通事故証明書の発行につながる。
  • ドアの開閉時に隣の車にぶつける「ドアパンチ」も当て逃げになり得る。被害に遭った場合の対応は通常の当て逃げと同じ。

日頃から、ドライブレコーダーの駐車監視機能を活用しておくと、駐車中の被害の記録に役立ちます。

当て逃げ被害で泣き寝入りしないために

当て逃げの被害は、犯人が特定できなければ相手に修理代を請求できず、自分の車両保険でまかなうことになるケースが大半です。そのため、まずやるべきことは、犯人特定の可能性を少しでも高めることと、自分の保険でどこまで対応できるかを把握することの2つです。

あらためて、当て逃げされたときに被害者ができることを整理すると、次のとおりです。

  • その場で記録を残す……傷や破片、周囲の状況を撮影し、相手の車のナンバーや特徴を可能な限り控える。
  • 警察に届け出る……交通事故証明書の発行につながり、保険を使う際に必要になる。
  • 防犯カメラ・ドライブレコーダーを早めに確保する……映像は上書きされる前に、施設の管理者などへ保存を依頼する。
  • 自分の車両保険の補償内容を確認する……当て逃げが補償対象か、保険を使った場合の等級への影響を保険会社に確認する。

犯人が特定できれば相手に賠償を請求できますが、特定できない場合は車両保険の活用が中心になります。被害に気づいたら、修理や洗車をする前に記録を残し、できるだけ早く警察と保険会社に連絡することが、泣き寝入りを避けるための最も確実な対応です。

※本記事は一般的な情報を提供するものであり、個別の事案については弁護士などの専門家にご相談ください。罰則や制度の内容は法改正により変わる場合があります。