この記事のポイント
- 物損事故の賠償額は「事故直前の車の時価額」を基準に決まる
- 時価額はレッドブック(オートガイド自動車価格月報)などの中古車価格資料で算定される
- 保険会社の提示する時価額は低めになりがちで、争いになりやすい
- 同種同等の中古車の実勢価格を示すことで、時価額を適正に主張できる場合がある
- 時価額に納得できないときは、交通事故にくわしい弁護士への相談が有効
なぜ「時価額」が物損事故で重要なのか
賠償額の上限を決める基準になる
物損事故で車が壊れたとき、加害者側に請求できる金額は「事故直前の車の時価額」を一つの基準として決まります。修理できる場合でも、修理費用がこの時価額(+買替諸費用)を上回るときは、低いほうの金額しか賠償されないのが原則です。
つまり時価額は、賠償額の上限を画する重要な数字です。この金額が低く見積もられると、受け取れる賠償金もそれだけ少なくなります。
時価額とは「同種同等の中古車の市場価格」
ここでいう時価額は、新車の購入価格でも、購入時に支払った金額でもありません。事故直前の時点で、車種・年式・型・走行距離・使用状態などが同じような中古車を、市場で買い直すのに必要な金額を指します。
時価額の調べ方
中古車価格資料を参考にする
時価額の算定では、次のような資料が参考にされます。実務では複数の資料を照らし合わせて判断することが一般的です。
| 資料 | 内容 |
|---|---|
| オートガイド自動車価格月報(レッドブック) | 中古車の卸売価格を車種・年式別にまとめた資料 |
| 中古車価格ガイドブック(イエローブック) | 小売価格の目安を示した資料 |
| 中古車情報サイトの掲載価格 | 同種同等の車が実際にいくらで売られているかの実勢価格 |
同種同等の中古車の実勢価格を集める
保険会社が提示する時価額に納得できないときは、自分でも調べてみることが大切です。中古車情報サイトで、自分の車と車種・年式・型・走行距離・グレードができるだけ近い車を探し、その販売価格を複数集めておきましょう。これが「同種同等の中古車の実勢価格」を示す資料になります。
保険会社の提示額が低くなりやすい理由
レッドブックの卸売価格をそのまま使うことがある
保険会社は、レッドブックに記載された価格を基準に時価額を提示してくることがあります。レッドブックは卸売(業者間取引)の価格をベースにしているため、消費者が実際に中古車を買い直すときの小売価格よりも低くなりがちです。
このため、レッドブックの数字をそのまま受け入れると、本来買い直しに必要な金額より低い賠償額で示談してしまう可能性があります。
古い車は時価額がゼロに近づくことも
長く乗っている車では、資料上の時価額が非常に低く、あるいはゼロに近く算定されることがあります。ただし、実際にはまだ十分に使える車であることも多く、資料上の数字だけで一律に判断するのは適切でないケースもあります。過去の裁判例では、減価償却の残額や車検期限までの使用価値を考慮した例もみられます。
時価額に納得できないときの対処法
実勢価格の資料をそろえて主張する
保険会社の提示額に疑問があるときは、まず同種同等の中古車の実勢価格を示す資料をそろえましょう。複数の販売価格を提示することで、提示額が市場の実態より低いことを具体的に示せる場合があります。
弁護士に相談する
時価額をめぐる交渉は、資料の評価や裁判例の知識が必要で、当事者だけでは折り合いがつきにくい分野です。とくに評価損(格落ち)や経済的全損とも関わってくるため、論点が複雑になりがちです。納得のいく解決を目指すなら、交通事故にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。