物損事故による「代車使用料」「休車補償」はどこまで賠償されるのか?

この記事のポイント

  • 物損事故で請求できる車の損害項目は「修理費用」「評価損」「代車使用料」「休車補償」
  • 車の修理期間中などに代車が必要な場合、「代車使用料」が賠償される
  • 代車使用料として認められるのは、事故車と同クラスのレンタカー代。使用期間は1~2週間程度
  • 営業車が破損して休業を余儀なくされた場合、「休車補償」が賠償される
  • 休車補償の金額=(1日あたりの平均売上―必要経費)×休業日数

人身事故と物損事故の違い

物損事故は自賠責保険の適用外。慰謝料も請求できない

交通事故はその結果によって「人身事故」と「物損事故」に大別されます。前者は死傷者が出た事故、後者は車や建物などのモノだけが壊れた事故。ペットなどの動物が死傷した場合も物損事故となり、原則として慰謝料は請求できません。

また、人身事故では自賠責保険から保険金が支払われますが、物損事故は支払われません。したがって、加害者本人または加害者が加入している任意保険会社に損害賠償を請求することになります。そして車だけが破損した場合、請求できる損害項目は以下の4種類です。

物損事故で請求できる損害賠償項目(自動車のみ)

  1. 車の修理費用(または事故直前の時価相当額+買替諸費用)
  2. 車の評価損(格落ち)
  3. 代車使用料
  4. 休車補償

本稿では③④の「代車使用料」「休車補償」について、くわしく解説していきます。①②に該当する「車の修理費用・買替費用・評価損」については以下の記事を参照してください。

物損事故による車の修理費用・買替費用はどこまで賠償される?評価損は認められる?

物損事故による代車使用料の賠償範囲

修理期間中などに使用したレンタカー代

事故で車が破損すると修理や買い替えを行いますが、すぐに修理が終わったり、買い替えた車が納入されたりするわけではありません。そのため、修理期間中や納車までの間に代車(レンタカー、タクシーなど)が必要になります。

そこで被害者が代車を使用した場合、必要かつ相当な範囲で「代車使用料」を請求することができます。認められる使用料は、原則として事故車両と同クラスのレンタカー代。ただし、極めて高価格の外車が破損した場合は、国産高級車のレンタカー代相当しか認められないでしょう。

代車使用の“必要かつ相当な範囲”とは

代車の使用期間として認められるのは、原則として1~2週間程度です。合理的な理由(修理費用の見積りや部品の調達に時間を要するなど)があれば、1~2ヵ月程度の期間が認められるケースもあります。ただし、修理の範囲などで加害者側の保険会社ともめて代車の使用期間が長引いた場合、全期間分の支払いは期待できません。

また、もともと休日だけ車を使用していた程度であれば、必要な日数分しか代車使用料は認められません。代車ではなく公共交通機関を使った場合は、その実費が賠償範囲となります。

物損事故による休車補償の賠償範囲

休業期間中の減収分

タクシーやトラックなどの営業車が破損し、すぐに代車が用意できない場合、「休車補償(休車損害)」を請求することができます。これは休業期間中(車の修理期間中、買い替え期間中、代車が用意できるまでの間など)の減収分に対する損害賠償。基本的な算定式は以下の通りです。

休車補償の金額=(1日あたりの平均売上―必要経費)×休業日数

「1日あたりの平均売上」の算定範囲は事故前から3ヵ月間以上の期間です。具体的な金額は、景気同行・車両の稼働率・休車時期(繁忙期/通常期/閑散期)などを総合的に考慮します。「必要経費」とは、休車によって浮いた経費のこと。ガソリン代や通行料などが該当します。

したがって、適正な休車補償を請求するためには、事故前の売上・経費などを証明する資料(税務申告書類、会社の帳簿、監督官庁に対する報告書など)が必要です。なお、自社が保有する遊休車を使って損害を回避できた場合は、基本的に休車補償は請求できません(または減額されます)。

物損事故の損害賠償に不満があったら

交渉による譲歩は期待できない。弁護士に相談を

一般的に人身事故よりも物損事故のほうが損害賠償額は少ないですが、争いは決して少なくありません。その理由のひとつは、過失割合でもめやすいから。ほとんどの物損事故は被害者にもなんらかの不注意や過失があったと判断されますが、相手にケガをさせていないので、互いに主張を譲らない傾向があるのです。

そして、過失割合は交渉による保険会社の譲歩が期待できません。休車補償についても、金額が大きくなると保険会社はなかなか譲歩しません。もし物損事故の損害賠償に不満があったら、交通事故分野に精通した弁護士に相談してみましょう。最近は初回相談を無料で受けつけている法律事務所も増えています。

「弁護士費用特約」を活用すれば、弁護士費用の自己負担なし

あなたが加入している自動車保険に「弁護士費用特約」がついていれば、保険会社に弁護士費用を負担してもらえます。ほとんどの物損事故は補償限度額(一般的に300万円)の範囲に収まるので、実質的な自己負担なしで弁護士に相談・依頼できるでしょう。この特約を使うデメリットはない(保険の等級は下がらず、翌年の保険料も上がらない)ので、積極的な活用をおすすめします。

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