この記事のポイント
- 信号無視の事故は、赤信号で交差点に進入した車が青信号側の車・歩行者と衝突する類型
- 過失割合は赤信号で進入した側が圧倒的に大きく、青信号側は原則として小さい
- ただし青信号側も、左右の安全確認を怠るなどがあるとわずかに過失がつくことがある
- 「双方が青」はあり得ないため、信号の色をめぐって主張が真っ向から対立しやすい
- 過失割合や賠償でもめたら弁護士への相談が有効
信号無視の事故とは|どんな状況で起きるのか
赤信号での進入が引き起こす衝突
信号無視の事故とは、交差点で赤信号を無視して進入した車が、青信号にしたがって進行してきた車や、横断歩道を渡る歩行者・自転車と衝突する事故です。信号は交差点の通行ルールの根幹であり、これを破る行為は重大な落ち度と評価されます。
典型的なパターンとしては、まず、信号が黄から赤に変わる場面で「まだ行ける」と判断して交差点に突っ込み、横から来た青信号の車と出会い頭に衝突するケースがあります。スピードを出したまま無理に通過しようとして起きやすい事故です。
次に、わき見やスマートフォンの操作などで赤信号に気づかず、そのまま交差点へ進入してしまうケースがあります。さらに、深夜の見通しのよい交差点で「車は来ないだろう」と赤信号を軽視して進入し、思わぬ車や歩行者と衝突するケースも見られます。
なぜ赤信号側の責任が重いのか
道路交通法では、信号機の表示にしたがう義務が定められています。赤信号は「止まれ」を意味し、これを無視して進入することは、交差点での衝突を直接的に引き起こす危険な行為です。そのため、赤信号で進入した側の落ち度は非常に重く評価されます。
一方、青信号で進入した側は、原則として交差点を進行してよい立場にあります。信号にしたがって正しく走行していたのですから、基本的には保護され、過失は小さく判断されます。
このように、信号無視の事故では赤信号側と青信号側の責任の差が大きいのが特徴です。ただし、青信号側がまったく注意しなくてよいわけではなく、状況によってはわずかに過失がつくこともあります。
信号無視の事故の過失割合
基本は赤信号側の過失が大きい
一方が赤信号、他方が青信号で交差点に進入して衝突した場合、四輪車同士であれば赤信号側の過失が大きく、青信号側10対赤信号側…ではなく、赤信号側が大半を負うのが基本の目安です。具体的には赤信号側が10割、または青信号側にもわずかな過失を認めて修正する、という考え方がとられます。
ただし、これはあくまで出発点です。実際の過失割合は、双方の速度、車種、信号の変わり目のタイミングなどの修正要素によって変わり、ケースにより変動します。
| 状況 | 過失割合の考え方(目安) |
|---|---|
| 一方が赤・他方が青で進入(四輪同士) | 赤信号側の過失が大きい(赤側10前後)が目安 |
| 青信号側にも前方不注視・左右確認不足 | 青信号側にもわずかな過失がつくことがある |
| 赤信号側が著しい速度超過 | 赤信号側の過失がさらに重く修正されやすい |
| 赤信号側が二輪・青信号側が四輪 | 二輪保護の観点で修正されることがある |
修正要素を具体的に見る
過失割合を動かす修正要素はいくつかあります。第一に、赤信号側の速度です。制限速度を大きく超えて進入していた場合は、危険性が高いとして赤信号側の過失がさらに重く見られます。
第二に、車種の違いです。赤信号側が二輪車で青信号側が四輪車の場合、二輪は事故時の被害が大きくなりやすい交通弱者として一定の保護が考慮され、過失割合が修正されることがあります。逆に赤信号側が四輪で相手が歩行者なら、歩行者は手厚く保護されます。
第三に、青信号側の落ち度です。青信号であっても、交差点に進入する際に左右の安全を確認する注意義務はあるとされます。明らかに信号無視で進入してくる車を十分手前で発見でき、減速や回避ができたのに何もしなかった、といった事情があれば、青信号側にもわずかな過失が認められることがあります。
被害者(青信号側)でも過失がつくのか
「青だから必ず0」とは限らない
青信号で進行していた被害者は、原則として過失が小さく保護されます。しかし、「青だったのだから自分は絶対に過失0だ」と言い切れるとは限りません。前述のとおり、交差点進入時の安全確認を怠った場合などには、わずかな過失を認められることがあります。
たとえば、見通しのよい交差点で、赤信号を無視して進入してくる車をかなり手前から認識できる状況だったのに、漫然と直進して衝突したようなケースです。こうした事情があると、青信号側にも回避の余地があったとして、過失が修正される可能性があります。
もっとも、こうした修正は限定的で、基本的には赤信号側の責任が圧倒的に大きいことに変わりはありません。相手保険会社が青信号側の過失を過大に主張してくることもあるため、安易に受け入れないことが大切です。
信号の色をめぐる対立に備える
信号無視の事故で最ももめるのが、信号の色をめぐる主張の食い違いです。交差する信号が同時に青になることはないため、双方が「自分は青だった」と主張すれば、どちらかの認識が事実と異なることになります。記憶違いもあれば、意図的に事実と異なる主張をするケースもあります。
この対立を解決するには、客観的な証拠が決め手になります。当事者の記憶だけでは水掛け論になりやすく、過失割合の判断が長引きます。事故直後の段階で、自分が青信号で進入したことを示す材料をできるだけ確保しておくことが重要です。
そのためにも、後述する証拠の確保を意識しておきましょう。証拠の有無によって、過失割合の結論が大きく変わることがあります。
罰則・刑事責任と請求できる損害
信号無視は行政・刑事の責任も伴う
信号無視は道路交通法違反であり、違反点数の加算や反則金の対象になります。これは賠償(民事)とは別に生じる行政上の責任です。事故を起こせば、さらに重い扱いになることがあります。
人を死傷させた場合には、過失運転致死傷罪などの刑事責任が問われることもあります。信号無視という悪質な態様は、刑事処分の判断においても考慮されうる事情です。被害者にとっては、こうした責任が民事の賠償とは別建てで存在することを押さえておくと、全体像が見えやすくなります。
被害者が直接関わるのは、このうち民事上の損害賠償です。行政・刑事の手続きは捜査機関が進めるものであり、被害者は自らの損害の回復に集中することになります。
請求できる損害の内訳
信号無視の事故でケガをした被害者は、ケガや損害の内容に応じて複数の費目を請求できます。まず、治療費や通院のための交通費は実費として請求の対象です。仕事を休んだことによる収入減があれば、休業損害も請求できます。
精神的・肉体的な苦痛に対しては、入通院慰謝料が支払われます。慰謝料の算定基準は自賠責保険の基準・任意保険会社の基準・過去の裁判例に基づく基準の3つに分かれ、裁判例に基づく基準で計算したほうが金額が高くなる傾向があります。ただし、必ず金額が上がるわけではなく、被害の程度などによって結果は変わります。
車の損害については、修理費などの物損を請求できます。出会い頭の衝突は損傷が大きくなりやすく、修理費も高額になりがちです。後遺障害が残った場合の逸失利益など専門的な費目もありますが、ここでは概要の把握にとどめ、必要に応じて専門家に確認するとよいでしょう。
証拠の確保が結論を左右する
信号の色を裏づける材料を集める
信号無視の事故では、どちらの信号が青だったかを客観的に示せるかどうかが、過失割合の結論を大きく左右します。最も有力なのが、ドライブレコーダーの映像です。自分の進入時の信号の色や、相手の動きが記録されていれば、強力な証拠になります。
次に、交差点や周辺店舗の防犯カメラ映像も手がかりになります。これらは一定期間で上書きされるため、早めに施設管理者へ保全を依頼することが大切です。あわせて、信号サイクル(各方向の青・黄・赤の秒数や切り替わりの順序)の記録も、どちらが赤で進入したかを推認する材料になります。
さらに、その場に居合わせた歩行者やほかのドライバーといった目撃者の証言、警察が作成する実況見分の結果も重要です。事故直後に動ける範囲で、目撃者の連絡先を控え、現場の状況を写真に残しておきましょう。
信号無視の事故でもめたら
過失割合は弁護士に相談
信号無視の事故は、信号の色をめぐって主張が真っ向から対立し、過失割合がもめやすい類型です。相手や保険会社から、青信号側にも過失があると主張されたり、提示された過失割合に納得できなかったりするときは、交通事故にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。
ドライブレコーダーや防犯カメラなどの証拠をどう活かせるか、適正な過失割合の見通しはどうかを確認したうえで、対応を決めるとよいでしょう。早い段階で相談しておくことで、不利な認定を避けやすくなります。