この記事のポイント
- 人身事故の罰金は過失運転致傷罪の刑罰の一つで、多くは略式手続きの罰金として科される
- 金額はおおむね20万~50万円程度とされることが多いが、事案により大きく異なる(上限は100万円以下)
- 被害の程度・過失の大きさ・前科の有無・示談の有無などで金額や起訴の判断が変わる
- 罰金は国に納めるもので、被害者への賠償(治療費・慰謝料)とはまったく別物
- 賠償で困ったら、刑事の罰金とは切り分けて弁護士に相談するのが有効
人身事故の罰金とは
過失運転致傷罪の刑罰としての罰金
人身事故を起こすと、加害者は過失運転致傷罪(被害者が亡くなった場合は過失運転致死罪)に問われることがあります。この罪の刑罰には拘禁刑(旧・懲役刑)と罰金があり、ケガの程度が比較的軽い事案などでは、罰金で処理されることが多くあります。
ここでいう罰金は刑事罰の一種です。納めれば前科(罰金前科)が残る点で、後述する反則金とは性質が異なります。人身事故で「罰金を払った」という場合、それは刑事処分を受けたことを意味します。
多くの人身事故では、公開の法廷を開かない略式手続きによって罰金が科されます。加害者が事実を認め、一定の要件を満たす場合に、簡易裁判所が書面審理で罰金を言い渡す流れです。
罰金が科されないこともある
すべての人身事故で罰金が科されるわけではありません。検察官が起訴猶予などで不起訴と判断すれば、罰金を含む刑事罰は科されません。被害が軽く、加害者の過失も小さく、示談が成立しているといった事情があると、不起訴になることもあります。
逆に、被害が重い、過失が著しい、飲酒など悪質な事情があるといった場合には、略式の罰金では済まず、正式裁判となって拘禁刑が検討されることもあります。罰金で済むかどうかは、事案の重さによって変わります。
被害者の立場では、「相手は罰金で終わるのか、それとも正式裁判になるのか」は処罰感情に関わる関心事です。ただし、これは検察官や裁判所が判断するものであり、被害者が直接決められるものではありません。
罰金の金額の目安と決まり方
金額のおおよその幅
人身事故の罰金の金額は、事案によって幅があります。一般には、おおむね20万~50万円程度とされることが多いものの、これはあくまで目安で、被害の程度や過失の大きさによって大きく異なります。法律上の上限は100万円以下の罰金です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 性質 | 過失運転致傷罪などの刑事罰(罰金前科が残る) |
| 金額のおおよその幅 | おおむね20万~50万円程度とされることが多い(目安) |
| 法定上限 | 100万円以下の罰金 |
| 多い手続き | 略式手続きによる罰金 |
表の金額はあくまで一般的に語られる目安であり、実際の金額は個別の事情で変わります。同じ「人身事故」でも、軽いケガと重い後遺障害が残ったケースとでは、扱いがまったく異なります。具体的な見込みは事案ごとに判断されるため、断定はできません。
金額を左右する要素
罰金の金額や、そもそも起訴されるかどうかを左右する要素はいくつかあります。第一に、被害の程度です。全治までの期間が長い、後遺障害が残ったといった重い被害ほど、処分は重くなる傾向があります。
第二に、過失の大きさや違反の悪質さです。著しい速度超過や信号無視など、危険性の高い運転であったほど重く評価されます。第三に、加害者の前科の有無や、反省・賠償の状況です。前科がなく、誠実に賠償している場合は有利に、その逆は不利に働きます。
第四に、示談の有無です。被害者と示談が成立し、加害者を許す意思(宥恕)が示されていると、不起訴や軽い処分につながりやすくなります。これが、加害者側が早期の示談を望む動機の一つになっています。
略式罰金で済むときと正式裁判になるとき
人身事故の罰金は、その多くが略式手続きで科されます。略式手続きは、加害者が事実を認め、簡易裁判所が書面審理で罰金を言い渡すもので、公開の法廷は開かれません。初犯で被害が比較的軽い事案などでは、この略式罰金で処理されることが一般的です。
一方、被害が重い、過失が著しい、飲酒運転やひき逃げが絡むといった悪質な事案では、罰金では済まず正式裁判になることがあります。正式裁判では拘禁刑が検討され、執行猶予が付くかどうかも含めて判断されます。同じ人身事故でも、事案の重さによって扱いは大きく変わります。
被害者の立場では、相手が略式罰金で終わるのか正式裁判になるのかは、処罰感情に関わる関心事です。ただし、これを決めるのは検察官や裁判所であり、被害者が直接選べるものではありません。被害者にできるのは、被害の実情や処罰感情を適切に伝えることです。
反則金との違い
青切符の反則金と赤切符の罰金
罰金と混同されやすいのが反則金です。反則金は、軽い交通違反を対象とする交通反則通告制度(いわゆる青切符)に基づく行政上の措置で、期限内に納付すれば刑事手続きには進まず、前科もつきません。
これに対して、人身事故で科される罰金は刑事罰(いわゆる赤切符の世界)であり、納めれば罰金前科が残ります。同じ「お金を納める」でも、前科がつくかどうかという大きな違いがあります。人身事故は、原則として反則金ではなく刑事手続きの対象です。
被害者としては、相手が「罰金を払った」と言っている場合、それは反則金ではなく刑事罰としての罰金である可能性が高いと理解しておくと、事故の重さを把握しやすくなります。
罰金と賠償は別物
罰金を払っても被害者の賠償にはならない
被害者がもっとも誤解しやすいのが、「加害者が罰金を払えば、自分への賠償も済む」という考えです。しかし、罰金は国に納められる刑事罰であり、被害者の手元に入るものではありません。被害者への治療費や慰謝料は、まったく別に請求する必要があります。
被害者が損害の賠償を受けるには、相手の自賠責保険や任意保険に対して、民事の賠償請求を進めることになります。加害者が罰金を払ったかどうかと、被害者が受け取る賠償額は連動しません。刑事と民事は別の手続きだと整理しておきましょう。
また、加害者が不起訴になり罰金が科されなかったとしても、民事の賠償責任が消えるわけではありません。刑事処分の有無にかかわらず、被害者は受けた損害の賠償を求めることができます。
人身事故の賠償で困ったら
罰金とは切り分けて弁護士に相談
人身事故の罰金は加害者に対する刑事罰であり、被害者が受け取る賠償とは別の制度です。被害者にとって大切なのは、ケガに見合った治療費や慰謝料などを適正に受け取ることです。
相手保険会社から提示された賠償額や過失割合に納得できないとき、示談と刑事処分の関係に迷うときは、交通事故にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。罰金や処分の話に振り回されず、自分の賠償の見通しを確認したうえで対応を決めるとよいでしょう。