この記事のポイント
- 反則金は青切符(交通反則通告制度)による行政上の措置で、期限内に納めれば刑事手続きに進まず前科はつかない
- 罰金は赤切符による刑事罰で、刑事手続きを経て科され、確定すると前科(罰金前科)がつく
- 人身事故や重大な違反は赤切符(刑事)として扱われ、罰金などの刑事罰の対象になりやすい
- 反則金も罰金も加害者に科される処分で、被害者への損害賠償(民事)とはまったく別物
- 賠償や示談でもめたら弁護士への相談が有効
交通事故の反則金と罰金は何が違うのか
性質がまったく異なる二つのお金
交通事故や交通違反で「お金を払う」と聞くと、反則金と罰金が同じものに思えるかもしれません。しかし、この二つは法律上の性質がまったく異なります。反則金は行政上の手続きで納めるお金、罰金は刑事罰として科されるお金です。
反則金は、交通反則通告制度にもとづく措置です。比較的軽い違反を対象に、期限内に決められた額を納めれば、それ以上の刑事手続きに進まずに済む仕組みになっています。いわば、刑事事件にしないための簡易な処理です。
これに対して罰金は、刑事裁判や略式の手続きを経て言い渡される刑罰の一種です。拘禁刑(旧・懲役刑)と同じ「刑」の仲間であり、納めること自体が有罪の結果である点で、反則金とは根本的に違います。
前科がつくかどうかが大きな分かれ目
両者の最も大きな違いは、前科がつくかどうかです。反則金は行政上の措置にすぎないため、期限内に納付すれば前科はつきません。交通反則通告制度は、軽微な違反を刑事手続きから外して処理するための制度だからです。
一方、罰金は刑事罰なので、有罪が確定すれば前科(罰金前科)として記録に残ります。前科は、起訴されて有罪(罰金以上の刑)が確定したときにつくもので、反則金の納付とはまったく扱いが異なります。
なお、行政処分で使われる「前歴」は、過去に免許の停止や取消などの処分を受けた経歴を指す別の概念です。前科(刑事)と前歴(行政)は混同されやすいので、区別して理解しておくと安心です。
青切符と赤切符の違い
切符の色で手続きの重さが変わる
交通違反で交付される切符には、いわゆる青切符と赤切符があります。青切符は比較的軽い違反に対して交付され、反則金を期限内に納めれば刑事手続きには進みません。赤切符は重い違反や人身事故などに対して交付され、刑事手続きへと進みます。
つまり、切符の色は、その違反が行政上の処理で済むのか、刑事事件として扱われるのかを大きく分けるサインだといえます。同じ「交通違反のお金」でも、入口の段階で道筋が分かれているのです。
なお、青切符はこれまで自動車やバイクが対象でしたが、2026年4月1日からは16歳以上の自転車運転者にも導入されました。信号無視やながらスマホなど113種類の違反が対象で、反則金は3,000円~12,000円です。
自動車の反則金は、普通車で信号無視が9,000円、指定場所一時不停止が7,000円、携帯電話使用等(保持)が18,000円など、違反の種類と車種ごとに定められています。一方、人身事故で科される罰金は20万~50万円程度になることが多いとされます。金額の決まり方は人身事故の罰金の目安で詳しく解説しています。
下の表に、青切符(反則金)と赤切符(罰金)の主な違いを整理しました。いずれも一般的な整理であり、個別の事案では扱いが異なることもあります。
| 項目 | 反則金(青切符) | 罰金(赤切符) |
|---|---|---|
| 対象 | 比較的軽い違反 | 重い違反・人身事故など |
| 手続き | 行政上の措置(交通反則通告制度) | 刑事手続き(略式・正式裁判) |
| お金の性質 | 反則金(行政上) | 罰金(刑事罰) |
| 前科 | つかない | つく(確定した場合) |
人身事故は刑事として扱われやすい
人身事故、つまり人にケガをさせたり死亡させたりした事故は、原則として刑事事件として扱われます。過失運転致傷罪などの対象となり、青切符による反則金ではなく、刑事手続きの中で罰金などが検討されることになります。
ただし、人身事故であれば必ず罰金になるわけではありません。被害の程度や事情によっては、起訴されずに済む(不起訴になる)こともあり、その場合は刑罰自体が科されません。どのような処分になるかはケースにより異なります。
物が壊れただけの物損事故は、それ自体では刑事罰の対象になりにくいものの、これも事案によって扱いは変わります。自分の事故がどう扱われるか不安な場合は、早めに専門家に確認するのが安全です。
反則金を納めないとどうなるか
放置すると刑事手続きに移ることがある
青切符を交付されて反則金の納付を求められたのに、期限内に納めなかった場合、その違反は刑事手続きへと移される可能性があります。反則金の納付はあくまで任意の措置であり、納めないからといって直ちに重い処分になるわけではありませんが、放置は得策ではありません。
刑事手続きに移ると、本来は反則金で済んだはずの軽い違反でも、刑事事件として捜査・処理の対象になります。結果として、かえって負担が大きくなることもあります。
反則金の内容や金額に納得できない場合でも、自己判断で放置するのではなく、手続きの意味を確認したうえで対応することが大切です。
被害者にとっての注意点
反則金も罰金も賠償ではない
被害者の立場で押さえておきたいのは、反則金も罰金も加害者に科される処分であって、被害者が受け取る賠償ではないという点です。加害者が罰金を納めても、そのお金が被害者に渡るわけではありません。
よくある誤解として、「加害者が罰金を払ったのだから、もう償いは済んだ」と受け取られることがあります。しかし、罰金は国に納められる刑事罰であり、被害者の治療費や慰謝料といった損害の回復とは別の話です。
被害者が受けた損害は、刑事・行政の処分とは切り離された民事の問題として、加害者側に賠償を請求していくことになります。加害者がどのような処分を受けたかにかかわらず、被害者には賠償を求める権利があります。
賠償は民事で別に進める
治療費、通院交通費、休業損害、慰謝料、車の修理費などの損害は、加害者本人や加害者が加入する保険会社に請求します。これは刑事手続きや行政処分の進み具合とは別に進められます。
加害者の刑事処分が軽かったとしても、それによって被害者の賠償が減るわけではありません。逆に、加害者が重い処分を受けたからといって、自動的に十分な賠償が受けられるわけでもありません。
賠償の交渉では、過失割合や金額をめぐって相手保険会社と見解が分かれることがあります。処分と賠償の違いを踏まえたうえで、自分の損害をきちんと請求していくことが大切です。
反則金・罰金と賠償の関係でもめたら
賠償のことは弁護士に相談
反則金や罰金は加害者の処分の問題であり、被害者が受け取る賠償とは別物です。この区別があいまいなまま示談を進めると、本来請求できる損害を取りこぼしてしまうおそれがあります。
加害者の処分内容と賠償を混同してしまいそうなとき、提示された賠償額や過失割合に納得できないときは、交通事故にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。処分と賠償を切り分けたうえで、適正な賠償の見通しを確認して対応を決めるとよいでしょう。