この記事のポイント
- バック中の事故は、後退する車が後方の車・歩行者・物などと衝突する類型
- 後退時は死角が大きく、後退する側に高い安全確認義務があるため過失が大きくなりやすい
- 駐車場の出庫・入庫や狭い道の切り返しで多く、双方が動いていれば過失が複雑になる
- 後方の相手にも、不用意な接近や合図の見落としがあれば過失がつくことがある
- 過失割合や賠償でもめたら弁護士への相談が有効
バック中の事故とは
後退は視界が限られ死角が大きい
バック中の事故とは、後退(バック)している車が、後方の車・歩行者・壁や柱などの物と衝突する事故です。前進時と違って進行方向が背中側になるため、視界が限られ、死角が大きくなります。ミラーやバックカメラを使っても、真後ろや車体の斜め後ろは見えにくく、確認が不十分になりがちです。
後退は速度こそ低いものの、低速だからこそ油断が生まれやすく、確認を一瞬怠っただけで事故につながります。歩行者、とくに子どもや車いすの利用者は車高より低い位置にいることがあり、ドライバーから見落とされやすい点にも注意が必要です。
こうした特性から、バック中の事故は「ぶつけるとは思わなかった」という不注意で起こりやすく、後退した側の責任が問われやすい類型になっています。
典型的な発生パターン
バック中の事故には、いくつかの典型的なパターンがあります。最も多いのが、駐車場での出庫時です。駐車区画から通路へバックで出るときに、通路を走行してきた車や、歩いている人と衝突するケースです。
次に多いのが、駐車区画への入庫時です。後退しながら駐車枠に入れようとして、隣の車や後方の壁・柱、買い物カートなどに接触します。狭い区画やハンドルの切り返しが必要な場面で起こりやすい事故です。
三つ目は、狭い道での切り返しや、行き止まりでの方向転換です。一方通行を間違えて後退する、路地で対向車とすれ違うために下がる、といった場面で、後方の車や歩行者と衝突します。いずれも後方確認の不足が共通する原因です。
バック中の事故の過失割合
後退する側の過失が大きくなりやすい
後退しようとする車には、後方の安全を十分に確認し、他の車や歩行者の通行を妨げてはならない義務があります。後退は通常の進行と異なるイレギュラーな動作であるため、後退する側には高い注意が求められます。この確認を怠って衝突した場合、後退した側の過失が大きく見られます。
たとえば、後方で停止していた車に後退してぶつかった場合は、後退車の過失が大半を占めるのが基本的な目安です。停止していた相手には、ぶつけられるのを避ける手立てが乏しいためです。
下の表は一般的な目安です。実際の割合はケースにより変動し、後方確認の状況や相手の動き、駐車場内かどうかなどの事情で修正されます。過失割合は断定できるものではありません。
| 状況 | 過失割合の考え方(目安) |
|---|---|
| 後退車が後方で停止中の車に衝突 | 後退車の過失が大きい(後退車8前後)が目安 |
| 双方が同時に後退して接触 | 双方に過失がつき、状況により近い割合になりやすい |
| 後方の相手が不用意に接近していた | 相手側にも過失がつくことがある |
過失割合を修正する主な要素
基本の割合は、双方の事情によって修正されます。後退車にさらに不利に働く要素としては、後方をまったく目視せずミラーだけで下がった、徐行せず勢いよく後退した、後退灯やハザードでの合図がなく周囲に意図が伝わらなかった、といった事情が挙げられます。
一方、後方にいた相手側にも過失がつくことがあります。後退灯が点いて下がり始めている車のすぐ後ろに不用意に近づいた、後退してくる車に気づけたのに漫然と進んだ、といった場合です。相手の前方不注視や不用意な接近は、相手側の過失として考慮されます。
さらに、駐車場内かどうかも判断に影響します。駐車場の通路は双方が低速で動き、互いに発進・後退することもあるため、公道とは異なる考え方がとられ、過失割合が複雑になりやすい場所です。これらの修正要素が重なると、最終的な割合は基本の目安から動きます。
事故直後に被害者がとるべき行動
安全確保から記録までを順番に
バック中の事故に遭ったら、まずは安全を確保します。駐車場や狭い道では他の車や歩行者の通行があるため、可能なら車を安全な位置に止め、ハザードランプを点けます。けが人がいれば、ためらわず救急へ連絡してください。
次に警察(110番)へ届け出ます。私有地である駐車場内の事故でも、警察への届け出は必要です。届け出をしないと交通事故証明書が発行されず、保険会社への賠償請求で不利になります。低速で軽微に見えても、必ず届け出ましょう。
そのうえで、相手の連絡先・車両情報・加入保険会社を控え、車の損傷箇所や双方の位置関係をスマホで撮影しておきます。その場で「修理代を払うので警察は呼ばないで」と示談を持ちかけられても応じず、保険会社を通して進めるのが安全です。
請求できる損害と揉めやすい点
請求できる損害の内訳
バック中の事故で相手に過失がある場合、被害者は損害に応じて費目を請求できます。物の損害としては、車の修理費が中心で、修理中の代車費用や、買い替えが必要なほどの損傷であればその費用も対象になります。
歩行者がはねられた場合や、衝撃でケガをした場合は、治療費、通院のための交通費、仕事を休んだ分の休業損害、痛みなどに対する慰謝料が請求の対象になります。慰謝料には自賠責保険の基準・任意保険会社の基準・過去の裁判例をもとにした基準があり、裁判例をもとにした基準で計算したほうが金額が高くなる傾向がありますが、必ずそうなるわけではなく、被害の程度によって結果は変わります。
なお、後遺障害が残った場合の逸失利益などは専門的な算定が必要になるため、ここでは概要にとどめます。低速の事故でも、転倒の打ちどころによってはケガが重くなることがあるため、軽視しないことが大切です。
双方の動きと確認状況をめぐる対立
バック中の事故で揉めやすいのが、双方の動きと確認状況をめぐる主張の食い違いです。「自分は止まっていたのに相手が下がってきた」「相手が後ろから突っ込んできた」と、互いに自分は止まっていた、相手が動いていたと主張するケースが少なくありません。
とくに駐車場では、双方が同時に後退して接触することもあり、どちらがどれだけ動いていたかで過失割合が変わります。後退灯が点いていたか、合図があったか、徐行していたか、といった点も争点になりがちです。
相手保険会社は自社の契約者に有利な前提で割合を提示してくることがあります。提示された割合に違和感があれば根拠を確認し、安易に受け入れないことが大切です。
証拠の確保が判断を左右する
ドライブレコーダーと防犯カメラ
バック中の事故では、どちらがどのように動いていたかを客観的に示せるかどうかが結果を左右します。最も有力なのがドライブレコーダーの映像です。とくに後方や車内を記録できるタイプ、駐車中も録画する駐車監視機能があると、後退時の状況や接触の瞬間を裏づけられます。
駐車場での事故であれば、施設の防犯カメラに事故の様子が映っていることがあります。これは過失割合を判断する有力な証拠ですが、映像は一定期間で上書きされるため、早めに施設の管理者へ保全を依頼することが大切です。
加えて、車の損傷箇所の写真や、双方の停止位置が分かる現場の写真も役立ちます。目撃者がいれば連絡先を控え、警察の実況見分には立ち会って、自分の認識を正確に伝えましょう。客観的な記録が、後の交渉で自分の主張を支える土台になります。
バック中の事故でもめたら
過失割合は弁護士に相談
バック中の事故は、双方の動きや確認の状況をめぐって主張が分かれやすく、とくに駐車場内では過失割合が複雑になりやすい類型です。提示された過失割合や賠償額に納得できないときは、交通事故にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。
ドライブレコーダーや防犯カメラなどの証拠をもとに、適正な割合の見通しを確認したうえで対応を決めるとよいでしょう。早めに相談しておくことで、不利な前提のまま示談が進むのを防ぎやすくなります。