この記事のポイント
- 自損事故とは、相手方のいない事故で、電柱やガードレールへの衝突・転落などが典型
- 「単独事故」とほぼ同じ意味で使われるが、自損事故は保険の場面で相手のいない事故を指すことが多い
- 自損でも警察への届け出は必要。届け出ないと交通事故証明書が取れず保険の手続きで不利になる
- 自分の対人・対物賠償保険や、本人のケガに対する自賠責保険は自損では使えない
- 保険の使い方や同乗者への賠償でもめたら弁護士への相談が有効
自損事故とは
相手方のいない、自分側の事故
自損事故とは、ぶつかる相手がいない事故、つまり自分の車だけで起こしてしまう事故のことです。電柱やガードレール、縁石、建物の壁などに衝突する、カーブを曲がりきれずに路外へ転落する、ハンドル操作を誤って自爆する、といったものが典型です。いずれも、事故の原因が自分の運転にある点が共通しています。
相手方がいないため、自損事故では「相手にぶつけられた」「相手が悪い」という構図が成り立ちません。損害の多くは自分の車や身体に生じ、責任も基本的に自分にあると整理されます。この点が、相手のいる事故との大きな違いです。
そのため、自損事故では「誰が悪いか」を相手と争う場面はなく、関心はもっぱら「自分の損害をどう回復するか」「使える保険は何か」に向かいます。相手のいる事故とは考え方の出発点が異なることを、まず押さえておきましょう。
単独事故との違い
自損事故とよく似た言葉に「単独事故」があります。どちらも相手方のいない事故を指し、日常的にはほぼ同じ意味で使われます。明確に定義が分かれているわけではなく、文脈によって言い換えられることが多い言葉です。
ニュアンスとしては、単独事故が「1台だけで起こした事故」という事実をそのまま表すのに対し、自損事故は保険の場面で「相手がいない、自分側の損害が問題になる事故」を指して使われることが多い、という違いがあります。保険の約款や案内では「自損事故」という表現が用いられることがあります。
いずれにせよ、両者を厳密に区別する必要はありません。大切なのは、相手がいない事故では使える保険や対応の考え方が、相手のいる事故とは変わるという点です。言葉の違いよりも、その中身を理解しておくことが役立ちます。
典型的な自損事故のパターン
どんな場面で起きやすいか
自損事故は、運転中のちょっとした判断ミスや、路面・天候の条件が重なって起こります。代表的なパターンを知っておくと、どんな場面に注意すべきかが見えてきます。
第一に多いのが、固定物への衝突です。脇見やハンドル操作のミスで、電柱・ガードレール・標識・縁石などにぶつかるケースです。駐車しようとして壁や車止めに接触するのも、この一種といえます。
第二に、カーブやスリップによる路外への逸脱です。速度の出しすぎや、雨・雪・凍結による滑りでカーブを曲がりきれず、対向車線にはみ出したり、路肩や側溝、崖下へ転落したりします。第三に、急ハンドルや急ブレーキでバランスを崩し、単独で横転・自爆するパターンもあります。いずれも、速度と路面状況への注意が予防の鍵になります。
自損事故が起きたときの対応
まずは安全確保と警察への届け出
自損事故を起こしたら、相手がいなくても、基本的な対応の流れは通常の事故と変わりません。慌てず順番に動くことが大切です。下の表に、事故直後にとるべき行動の概要を整理します。
| 順序 | すること |
|---|---|
| 1 | ハザードを点け、安全な場所へ車を移動して二次事故を防ぐ |
| 2 | 自分や同乗者のケガを確認し、必要なら救急(119番)へ連絡 |
| 3 | 警察(110番)へ届け出る |
| 4 | 壊した物(ガードレール等)があれば管理者にも連絡する |
| 5 | 損傷箇所や現場を撮影し、自分の保険会社へ連絡する |
「相手がいないから警察は呼ばなくてよい」と考えるのは誤りです。自損事故でも警察への報告は必要で、届け出をしないと交通事故証明書が取得できず、後の保険の手続きで不利になります。事故後にとるべき対応全般については事故被害者が知っておきたい対応もあわせて確認しておくと、流れをつかみやすくなります。
同乗者がいるときは賠償の問題も生じる
自損事故でも、車に同乗者が乗っていてケガをした場合には、運転者が同乗者に対して賠償責任を負うことがあります。相手がいない事故でも、同乗者との関係では「加害者」と「被害者」の構図が生じうるためです。
この場合、同乗者のケガは、運転者が加入する人身傷害保険や搭乗者傷害保険、あるいは対人賠償保険(家族など補償対象から外れる人を除く)で対応できることがあります。誰がどの保険でカバーされるかは契約により異なるため、保険会社への確認が欠かせません。
同乗者が家族か、友人など第三者かによっても扱いが変わることがあります。同乗者にケガをさせてしまったときは、対応を自己判断で済ませず、保険会社や専門家に相談しながら進めることが大切です。
自損事故のお金の問題で気をつけたいこと
対物の弁償と、使えない保険
自損事故では、自分の車の修理費に加えて、壊した物の弁償が問題になることがあります。ガードレールや電柱、信号機などの公共物を壊した場合、その復旧費用を道路管理者などから請求されることがあります。金額は損傷の程度によって変わります。
ここで注意したいのが、自損事故では使えない保険があることです。相手方がいないため、自分の対人・対物賠償保険は基本的に使いません。また、自賠責保険は「他人」の人身損害を補償するものなので、運転者本人のケガには使えません。この点は誤解が多いところです。
壊した公共物の弁償については、契約によっては対物賠償保険が使えることもありますが、扱いは契約により異なります。どの損害にどの保険が使えるのかは、自損事故で使える保険を整理した解説や保険会社への確認で、早めにはっきりさせておくとよいでしょう。
自損事故をめぐるよくある誤解
届け出や保険についての思い込みに注意
自損事故で最も多い誤解が、相手がいないのだから警察に届け出なくてよい、というものです。しかし、道路交通法では、物を壊した場合も含めて、事故を起こした運転者に警察へ報告する義務があります。固定物への衝突でも、報告を怠れば義務違反になりかねません。
第二に、「警察を呼ぶと自分が責められるだけで損だ」という誤解もあります。実際には、届け出があってはじめて交通事故証明書が発行され、車両保険などの手続きを進める前提が整います。届け出をためらうと、かえって保険金の請求で不利になりかねません。
第三に、「自損事故なら、どんな損害も自分の保険で必ず補える」という思い込みにも注意が必要です。使える保険は契約の内容によって変わり、車両保険のタイプによっては自損が補償の対象外のこともあります。いざというときに慌てないよう、事故の前に自分の契約内容を確認しておくことが大切です。
自損事故で困ったら
保険の使い方や賠償は弁護士に相談
自損事故は相手と過失割合を争う場面こそありませんが、自分の車や身体の損害をどの保険で回復するか、同乗者への賠償をどうするか、壊した物の弁償をどう扱うかなど、判断に迷う場面は少なくありません。
使える保険の範囲や同乗者への対応に迷うとき、保険会社から提示された内容に納得できないときは、交通事故にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。状況に応じて使える手段を確認したうえで対応を決めれば、損害の回復を進めやすくなります。