交通事故発生時の対応マニュアル

人身事故への切り替え方法|診断書の提出と警察対応

人身事故への切り替え方法|診断書の提出と警察対応

この記事のポイント

  • 人身事故への切り替えには、医師の診断書を警察へ提出することが必要
  • 診断書を取っただけでは切り替わらず、警察への届け出があって初めて人身事故になる
  • 事故を扱った警察署(交通課)が手続きの窓口になる
  • 切り替え後は実況見分に立ち会い、当時の状況を正確に伝えることが大切
  • 手続きや賠償でもめたら弁護士への相談が有効

人身事故への切り替えには診断書の提出が必要

診断書がケガを裏づける土台になる

事故でケガをしたのに物損事故として処理されている場合、人身事故へ切り替えることで、治療費や慰謝料などの人身の損害を請求しやすくなります。その切り替えの手続きで中心になるのが、医師の診断書です。

診断書は、ケガの内容と全治の見込みを医学的に示す書類で、ケガが本当に存在することを裏づける土台になります。これがなければ、警察も人身事故として受理しにくく、相手の保険会社にもケガを示せません。

逆にいえば、診断書を取得し、それを警察へ提出することが、人身事故への切り替えの最初の関門です。痛みや違和感があるなら、まずは整形外科などを受診して診断書を取得しましょう。

人身事故へ切り替える手順

ステップごとの流れ

人身事故への切り替えは、受診から警察への届け出、その後の対応まで、いくつかの段階に分かれます。まずは全体の流れを把握しておきましょう。

人身事故への切り替えの手順(目安)
ステップ すること 必要なもの・窓口
1 整形外科などを受診する 健康保険証など
2 医師に診断書を作成してもらう 警察提出用の診断書
3 事故を扱った警察署へ連絡する 交通課(事故担当)
4 診断書を提出し人身事故として届け出る 診断書・本人確認書類
5 実況見分などに立ち会う 事故状況の記憶の整理

この流れのうち、見落とされやすいのが、診断書の取得と警察への提出が別々の手続きだという点です。診断書を取っただけでは人身事故にはならず、警察への届け出が欠かせません。

受診と診断書の取得

切り替えの第一歩は、医療機関の受診です。むちうちや打撲など、外見で分かりにくいケガもあるため、痛みが軽くても自己判断せず受診することが大切です。受診が事故から遅れるほど、事故とケガの関係を疑われやすくなるため、できるだけ早く受診しましょう。

受診した際は、警察に提出するための診断書を医師に作成してもらいます。診断書には、傷病名や全治の見込み(全治○週間など)が記載されます。この全治の見込みは、ケガの程度を示す目安として扱われます。

診断書は、警察提出用のほか、保険会社への請求用にも必要になることがあります。何通必要かを確認し、まとめて依頼しておくとスムーズです。

警察署への連絡と届け出

診断書を取得したら、その事故を扱った警察署へ連絡します。窓口は交通課の事故担当になります。物損事故として届け出た事故を、人身事故へ切り替えたい旨を伝え、診断書を持参して提出します。

警察によっては、改めて当事者から事故状況の聞き取りを行ったり、実況見分の日程を調整したりすることがあります。切り替えの手続きや必要な書類は、警察署によって細かな運用が異なることがあるため、事前に電話で確認しておくと安心です。

事故から時間が経ちすぎていると、切り替えに応じてもらえないこともあります。その場合でも、診断書や通院記録があれば相手の保険会社へ人身の損害を請求できる余地は残るため、まずは記録を確保しておくことが大切です。

警察対応のポイント

実況見分では状況を正確に伝える

人身事故に切り替わると、警察が実況見分を行うことがあります。実況見分は、事故現場で当事者の立ち会いのもと、車や人の位置、進路、速度などを調べ、調書にまとめる手続きです。この調書は、後で過失割合が争いになったときの重要な証拠になります。

立ち会いの際は、事故当時の状況をできるだけ正確に伝えることが大切です。記憶があいまいなまま説明すると、自分にとって不利な内容で記録されてしまうおそれがあります。事前に、どの位置で何が起きたかを思い出して整理しておきましょう。

事実と異なる点や、納得できない記録があれば、その場で訂正を求めることも大切です。あとから内容を覆すのは簡単ではないため、立ち会いの場での確認が肝心です。

切り替え後の流れ

刑事手続きと保険会社への連絡

人身事故へ切り替わると、加害者に対して過失運転致傷罪などの刑事手続きが進むことになります。これは加害者の処分に関わるもので、被害者が受け取る賠償(民事)とは別の手続きです。被害者は、被害の状況や処罰感情を捜査機関に伝えることで関与できます。

あわせて、自分の保険会社と相手の保険会社にも、人身事故へ切り替えたことを連絡します。これにより、治療費や慰謝料などの人身の損害について、保険を通じたやりとりが進みます。

切り替え後は、医師の指示に従って通院を続け、通院の記録を残しておくことが大切です。慰謝料は通院の期間や日数をもとに算定されるのが一般的であり、こうした記録が賠償の土台になります。

切り替えが間に合わないときの対応

事故から時間が経ちすぎたなどの理由で、警察が人身事故への切り替えに応じてくれないこともあります。しかし、警察の手続き上は物損事故のままでも、ケガの賠償を完全にあきらめなければならないわけではありません。

このような場合には、相手の保険会社に「人身事故証明書入手不能理由書」という書類を提出し、なぜ人身事故としての証明書を用意できないのかを説明したうえで、人身の損害として治療費や慰謝料を請求する方法があります。受診の記録や診断書がそろっていれば、ケガと事故の関係を示せる余地が残ります。

ただし、この方法は本来の人身事故への切り替えに比べて、ケガと事故の関係を立証しにくくなりがちです。やはり、ケガがあるならできるだけ早く受診し、速やかに切り替えの手続きを進めておくことが望ましいといえます。

人身事故への切り替えで困ったら

手続きや賠償は弁護士に相談

人身事故への切り替えは、診断書の取得や警察への届け出、実況見分への立ち会いなど、慣れない手続きが続きます。切り替えが遅れたり、相手の保険会社にケガとの因果関係を否定されたりすると、適正な賠償を受けにくくなることもあります。

手続きの進め方に迷ったとき、相手の保険会社の対応や提示された賠償額に納得できないときは、交通事故にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。手続きの見通しや適正な賠償の目安を確認したうえで対応を決めれば、安心して手続きを進めやすくなります。