この記事のポイント
- 任意保険を使うと等級が下がり、翌年以降の保険料が上がることがある
- 小さな物損では、自費で直す場合と保険を使った場合の数年分の負担を比べて判断する
- もらい事故(自分の過失0)では、自分の対人・対物賠償保険は使わず等級も下がらない
- 人身傷害や弁護士費用特約などは、使っても等級が下がらない扱いのことが多い(契約による)
- 保険の使い方や賠償の進め方で迷ったら弁護士への相談が有効
任意保険を使うと等級が下がる仕組み
ノンフリート等級と保険料の関係
自動車の任意保険には、ノンフリート等級制度という仕組みがあります。1等級から20等級まであり、等級が高いほど保険料の割引率が大きくなります。無事故で1年を過ごすと等級が1つ上がり、保険料が下がっていくのが基本です。
ところが、事故で保険を使うと、その分だけ等級が下がります。等級が下がると、翌年以降の保険料が上がるため、「保険を使ったほうがかえって負担が増える」という状況が起こり得ます。これが、事故のときに保険を使うべきか迷う理由です。
さらに、等級が下がると「事故有」の割増係数が一定期間適用され、同じ等級でも割引率が低く扱われます。つまり、目先の修理費だけでなく、その後数年分の保険料への影響まで含めて考える必要があります。
事故の3つの区分
保険を使ったときに等級がどれだけ下がるかは、事故の種類によって変わります。大きく分けて、3等級ダウン・1等級ダウン・ノーカウントの3つの区分があります。どの区分になるかで、保険料への影響が大きく変わります。
| 区分 | 主な対象 | 等級への影響 |
|---|---|---|
| 3等級ダウン事故 | 対人・対物賠償、車両保険の多くなど | 翌年に等級が3つ下がる |
| 1等級ダウン事故 | 盗難・台風・飛び石など車両保険の一部 | 翌年に等級が1つ下がる |
| ノーカウント事故 | 人身傷害・搭乗者傷害・弁護士費用特約のみの利用など | 等級は下がらない |
どの補償がどの区分に当たるかは、契約内容や保険会社によって異なります。実際にどう扱われるかは、加入している保険の約款や保険会社への確認が確実です。
保険を使うべきか迷う場面
小さな物損では自費修理も選択肢
保険を使うか迷いやすいのは、修理費が比較的少額の物損事故です。たとえば、バンパーの小さなへこみや擦り傷など、修理費が数万円程度にとどまるケースです。こうした場合、保険を使わずに自費で直すという選択肢も現実的になります。
なぜなら、保険を使って等級が下がると、その後数年にわたって保険料が上がり、合計すると修理費を上回る負担になることがあるからです。目先の出費を保険でまかなえても、トータルでは損になる可能性があるわけです。
一方で、修理費が高額な場合や、相手にけがをさせて高額な賠償が必要な場合は、保険を使う意味が大きくなります。負担の大きさによって、判断は変わってきます。
判断の目安は「修理費」と「数年分の保険料の上昇」の比較
保険を使うべきかどうかの基本的な目安は、保険を使わずに自費で負担する金額と、保険を使った場合に増える数年分の保険料を比べることです。自費負担のほうが安く済むなら、使わない選択も合理的です。
この比較は自分だけで計算するのは難しいため、保険会社に「保険を使った場合と使わない場合で、今後の保険料がどれだけ変わるか」を試算してもらう方法があります。多くの場合、見積もりを出してもらえるので、それをもとに判断するとよいでしょう。
ただし、判断には期限がある点に注意が必要です。保険を使うかどうかを後から変更できる期間には限りがあるため、迷ったら早めに保険会社へ相談し、試算を取り寄せることが大切です。
等級が下がらない・使わないケース
もらい事故では自分の賠償保険は使わない
自分にまったく過失のない、いわゆるもらい事故では、自分の対人・対物賠償保険を使う場面がありません。賠償する相手がいないため、これらの保険を使うこと自体がなく、等級も下がりません。
このようなケースでは、相手側の保険から賠償を受けるのが基本です。自分の保険を使うのは、車両保険で先に修理を進めたい場合や、人身傷害でけがの補償を受けたい場合などに限られます。
ただし、もらい事故では、自分の保険会社は示談交渉を代行できないという注意点があります。過失がない被害者に代わって交渉すると非弁行為にあたるおそれがあるためで、相手側との交渉を自分で抱えることになりがちです。
使っても等級が下がらない補償もある
補償の種類によっては、使っても等級が下がらないものがあります。人身傷害保険や搭乗者傷害保険、弁護士費用特約のみを利用する場合は、ノーカウント事故として扱われ、等級に影響しないことが多いとされています。
これらの補償は、等級ダウンを気にせずに使いやすいのが利点です。けがの治療や、相手との交渉を弁護士に依頼する費用などを、保険料への影響を心配せずにまかなえる場面があります。
もっとも、どの利用がノーカウントになるかは契約や保険会社によって異なります。使う前に、その利用が等級に影響するかどうかを、約款や保険会社に確認しておくと安心です。
よくある誤解と注意点
「事故=必ず保険を使う」ではない
事故が起きたら反射的に保険を使うものだと考えている人は少なくありませんが、それは必ずしも正しくありません。前述のとおり、少額の物損では使わないほうが負担が軽く済むこともあり、使うかどうかは比較したうえで決めるべきものです。
また、保険を使う・使わないの判断と、相手への賠償をどう進めるかは別の問題です。自分の保険を使わない場合でも、相手に過失があれば、相手側へ損害を請求する権利はそのまま残ります。
逆に、保険を使えば賠償がすべて解決すると思い込むのも誤解です。過失割合や損害の範囲をめぐって相手と争いになることもあり、保険の利用とは別に、賠償の中身そのものを見極める必要があります。
保険の使い方や賠償で困ったら
判断に迷ったら弁護士に相談
任意保険を使うべきかどうかは、修理費や賠償額、等級への影響など、複数の要素を見比べて判断する必要があります。とくに相手にけがをさせた事故や、過失割合に争いがある事故では、保険の使い方だけでなく賠償全体の見通しが重要になります。
保険を使うかどうかの判断に迷うとき、提示された過失割合や賠償額に納得できないときは、交通事故にくわしい弁護士に相談することをおすすめします。保険の使い方と賠償の進め方の両面から見通しを確認したうえで対応を決めれば、不要な負担や不利な示談を避けやすくなります。