「休業損害」をしっかり請求する方法②~専業主婦・学生・失業者の場合~

この記事のポイント

  • 事故による入通院で仕事を休んだら、その減収分(休業損害)を請求できる
  • 休業損害の金額は「1日あたりの基礎収入×休業日数」で決まる
  • 専業主婦の「基礎収入」は女性労働者の平均賃金額
  • 「休業日数」は仕事や家事を休む必要が認められた日数
  • 休業損害には3種類の算定基準(自賠責保険/任意保険/裁判)がある
  • 任意保険会社は休業損害を低めに算定しようとする傾向がある

「休業損害」の基礎知識

事故による入通院で仕事を休んだら、その減収分を請求できる

交通事故によってケガをすると、入院や通院期間中に仕事を休まざるをえないことがあります。その間の減収分を「休業損害」といい、加害者側に損害賠償請求することができます。

収入が減らなければ、仕事を休んでも請求できない

仕事を休んでも収入が減らなければ、原則として休業損害を請求できません。ただし、専業主婦・学生・失業者の場合、実際の減収がなくても請求できるケースも。くわしくは本稿の後半で紹介します
(会社員・会社役員・自営業者の休業損害については、以下の記事を参照してください)。

「休業損害」をしっかり請求する方法①~会社員・経営者・自営業者(個人事業主)の場合~

休業損害の金額を決める方法

休業損害=1日あたりの基礎収入×休業日数

休業損害の金額は上記の式によって決まります。「1日あたりの基礎収入」とは、休業損害を算定するうえで基礎となる収入のこと。会社員は「実際の収入=基礎収入」ですが、専業主婦・学生・失業者は違います。また、それぞれの算定基準(自賠責保険/任意保険/裁判)によっても、規定や考え方が異なります。

休業日数とは“仕事を休む必要が認められた日数”

「休業日数」とは、仕事や家事労働を休んだ日数のこと。厳密には“仕事や家事労働を休む必要が認められた日数”です。たとえば、入院期間は休む必要がありますが、通院期間はそうとは限りません。

ここでポイントとなるのが、医師の指示や医療記録です。主治医が休業の必要性を認めれば、通院や自宅療養をした日も「休業日数」に含まれます。証拠を残すために、自宅療養が必要である旨をカルテや診断書に記載してもらったほうがいいでしょう。

【算定基準①】自賠責保険

5,700円(~19,000円)×休業日数

前述したように、算定基準によって基礎収入の規定や考え方が異なります。まずは最低限の補償である「自賠責保険」の基準について説明しましょう。自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)とは、法律にもとづいて加入が義務づけられている保険。加害者の車両が無車検や車検切れでない限り、確実に保険金が支払われます。

1日あたりの収入が5,700円を超えていたら

この自賠責保険の基準において、休業損害の金額は原則として「5,700円×休業日数」と定められています。つまり、事故前の1日あたりの収入が5,700円未満だとしても、基本的に5,700円が支払われます。1日あたりの収入が5,700円を超えていた場合、それを立証できれば、19,000円を上限に実額が支払われます。

傷害事故の場合、自賠責保険の支払限度額は120万円

自賠責保険は必要最低限の補償なので、基礎収入の上限が定められています。さらに、損害賠償金全体の支払限度額(傷害事故は120万円)も定められています。そのため、加害者側が任意保険に加入していれば、任意保険会社に損害賠償を請求することになります。

【算定基準②】任意保険

1日あたりの基礎収入(上限あり)×休業日数

次に「任意保険」の基準について説明します。任意保険会社は独自に定めた基準を使って、休業損害の金額を算定します。この内容は公表されていませんが、自賠責保険の基準に近い(同等か少し上乗せした程度)と考えられます。

休業日数の認定が厳しい傾向も

たとえば「基礎収入」は実収入をベースにしたうえで、上限額が定められているようです。「休業日数」は自宅療養を含めない傾向があるので、むしろ自賠責保険よりも認定が厳しい可能性も。通院日の休業についても必要性を否定されるケースがありますが、その解釈が正しいとは限りません。

【算定基準③】裁判

1日あたりの基礎収入×休業日数

「裁判基準」とは、過去の判例にもとづいた法的に適正な基準です。弁護士が任意保険会社と交渉する際に使用し、裁判ではこの基準にそった休業損害が支払われます。

裁判をすれば、休業損害の限度額はない

当然、「基礎収入」に上限はなく、収入に応じた金額が認められます。「休業日数」についても休業の必要性を立証すれば、すべて認められます。したがって、加害者側の保険会社の説明をうのみにせず、裁判基準にそった休業損害を請求しましょう。

「専業主婦」の休業損害

1日あたりの女性労働者の平均賃金×休業日数

ここからは「裁判基準」を基本にして、被害者の立場ごとのポイントを解説していきます。まず前提として、収入のない専業主婦(主夫)も休業損害を請求する権利があります。それにもかかわらず、任意保険会社が休業損害を提示してこないケースがあるので、注意してください。

長期間にわたって休んだ場合は減額される可能性も

専業主婦の場合、「賃金センサス(賃金に関する政府の統計調査)」の女性労働者の平均賃金額を基礎収入として、休業損害を算定します。休業日数は入通院のために家事労働を休まざるをえなかった日数です。

しかし、専業主婦には会社員のような「休業損害証明書」がなく、休業の必要性や日数を証明するのは難しいもの。そのため、長期間にわたって休んだ場合、ケガの部位や程度などに応じて休業損害の金額を減らされる可能性があります。

兼業主婦は「実収入」または「女性労働者の平均賃金額」を採用

パートタイムなど仕事をもつ主婦の場合、仕事と家事の休業損害を両方請求することはできません。「実収入」と「女性労働者の平均賃金額」を比較し、多いほうの金額を基礎収入として請求します。なお、代替労働力として家政婦やベビーシッターを利用する必要があったときは、実費を休業損害として請求できます。

「学生」の休業損害

原則として認められないが、例外アリ

A)就職先が決まっている場合

就職先で得られる予定の1日あたりの収入×休業日数

原則として、学生は休業損害を請求できません。しかし、就職先が決まっていれば、就職予定日後の休業日数に応じた休業損害を請求できます。その際の基礎収入は、就職先で得られる予定の収入。ときには男女別の平均賃金額が採用されることもあります。

A)長期にわたって同じアルバイト先で働いている場合

1日あたりの収入(事故前3ヵ月間の収入÷90日)×休業日数

同じアルバイト先で継続して働いていれば、学生でも休業日数に応じた減収分を請求できます。就労期間は1年以上が目安。それよりも短期間のアルバイトは「収入の確実性が低い」と判断されるので、休業損害が認められないでしょう。

「失業者」の休業損害

原則として認められないが、例外アリ

A)就職先が決まっている場合

就職先で得られる予定の1日あたりの収入×休業日数

原則として、失業者は休業損害を請求できません。しかし、学生の場合と同じく、就職先が決まっていれば、就職予定日後の休業日数に応じた休業損害を請求できます。その際の基礎収入は、就職先で得られる予定の収入。ときには男女別の平均賃金額が採用されることもあります。

地主や家主は休業損害を請求できない

また、就職先が決まっていなくても、あきらめるのは早計です。労働意欲と労働能力があり、就職の可能性が高い場合は休業損害が認められる可能性も。金額については、以前の勤務先や再就職先の給与水準などによって決まります。

なお、地主や家主は定期的な収入がありますが、「無職者」として扱われます。入通院をしても収入に影響はないので、休業損害は請求できません。

参考:交通事故の休業損害まとめ~主婦、パート、自営業者から会社員まで~

休業損害をモレなく請求するためには

無料の法律相談を活用して、弁護士に法的見解を確認

加害者側の保険会社は支出を抑えるために、損害賠償金を低めに算定しようとする傾向があります。休業損害においては、休業の必要性や基礎収入の金額を争うケースだけではありません。そもそも、主婦の休業損害を提示しないことすらあるのです。

また、学生や失業者は仕事も家事もしていないので、例外に気づきづらいもの。休業損害をモレなく請求するために、弁護士へ相談してみましょう。まずは無料の法律相談を活用し、法的な見解を確認することをおすすめします。

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