【入院や通院に関して請求できる費用は?】治療費は原則実費。入院雑費は定額
この記事のポイント
- 入通院関連で請求できる費用は 1.治療関係費/2.付添看護費/3.入院雑費/4.通院交通費
- 1.治療関係費の「治療費」「入院費」は原則として実費が請求できる
- 2.付添看護費は入通院につきそう必要がある場合に、実費や一定の費用を請求できる
- 3.入院雑費は実費ではなく、1日あたりの定額が請求できる
- 4.通院交通費は実費が請求できる(タクシー代は認められない可能性あり)
目次
傷害事故で請求できる入通院関連の損害賠償
交通事故によるケガで入院や通院を強いられると、さまざまな出費が発生します。では、どこまでの費用を加害者側に請求できるのでしょうか? 本稿では入通院関連で請求できる4種類の費目を紹介し、損害賠償請求におけるポイントを説明していきます。
入通院関連で請求できる4種類の費目
- 治療関係費
- 付添看護費
- 入院雑費
- 通院交通費
1. 治療関係費 – 治療費・入院費・マッサージ費など
治療費と入院費は、原則として実費の全額が支払われる
「治療関係費」とは治療費、入院費、鍼灸・マッサージ費用など。病院での診察料・検査料・投薬料・手術費用といった「治療費」は、基本的に実費の全額が支払われます。その際に病院の請求書や領収書が必要なので、必ず証明資料を保管しておきましょう。
「濃厚診療」「過剰診療」「高額診療」に注意
交通事故によるケガの治療は、基本的に健康保険を使わず、自由診療の扱いとなります。そのため、医師の提案による濃厚診療(必要以上の丁寧な診療)や過剰診療(医学的に不必要な診療)、高額診療(一般的水準よりも著しく高額な診療)に注意してください。これらに該当する場合、治療費の一部しか支払われません。
個室や特別室などの高額な室料は認められない
「入院費」についても、基本的に実費の全額が支払われます。室料は一般病室の費用が基準となるので、個室や特別室などの高額な室料(差額ベッド代)は認められません。ただし、ケガの程度や病室の空き状況によっては、全額が認められます。
医師の指示がなければ、鍼灸・マッサージ費は支払われない
「鍼灸・マッサージ費」とは、正規免許をもつ柔道整復師(整骨院や接骨院)、あんま・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師が行う施術費をさします。整体やカイロプラクティックは国家資格のない民間療法のため、このカテゴリーには含まれません。
病院での治療費と比較すると、鍼灸・マッサージ費は支払い条件が厳しくなります。基本的に“医師が治療の有効性を認め、通院を指示した場合”に必要かつ妥当な実費が支払われます。
医師に相談して、書面で通院の指示を受けておく
そのため、自己判断で整骨院や接骨院に通っていると、一部の費用しか支払われない可能性があります。あらかじめ整形外科などの医師に相談して、書面で通院の指示を受けておきましょう。なお医師の指示がなければ、マッサージ器の購入費なども損害賠償の対象になりません。
2. 付添看護費 – 看護師や家族が入通院につきそった際の費用
付添看護費の相場は「入院」と「通院」で異なる
被害者が入通院した際に看護師や家族がつきそって看護する必要があれば、「付添看護費」を請求できます。そこで入院と通院の場合に分けて、それぞれの付添看護費の相場を紹介しましょう。
医師の指示がなければ、原則として付添看護費を請求できない
原則として、看護体制が整備された病院では入院時の付添看護費は認められません。ケガの程度や被害者の年齢などを考慮して医師が付添看護を指示した場合、その費用を請求できます(医師の指示がなくても、状況によっては付添看護費が認められるケースがあります)。
プロの付添人が必要な場合、実費の全額が支払われる
病院や専門機関から看護師などが派遣される場合、実費の全額が支払われます。家族や親族がつきそった場合は実費が存在しないので、目安となる基準が定められています。その基準は以下の3種類。同じ条件でも基準によって金額が異なるので、注意してください。
1. 自賠責保険基準 – 4,100円 | 自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は法律にもとづく強制加入保険なので、国が決めた必要最低限の補償になります。 |
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2. 任意保険基準 – 4,100円程度 | それぞれの任意保険会社が独自に定めた基準です。詳細は公開されていませんが、付添看護費は自賠責保険基準とほとんど同じと考えられます。 |
3. 裁判基準(弁護士基準)- 6,500円 | 過去の判例で認められた金額にもとづき、弁護士が任意保険会社と交渉・裁判するときに使用する基準です。いちばん金額が高く、法的に適正な基準です。 |
※上記基準はすべて1日あたりの費用
基準は目安。状況によって、必要かつ妥当な費用が認められる
自賠責保険基準を含めて、上記の費用は目安です。被害者が幼児で母親がつきそう必要がある場合など4,100円以上の収入減が証明できれば、必要かつ妥当な費用が認められます。
「通院」の付添看護費/1日あたり2,050円or 3,300円
被害者が幼児・高齢者・身体障害者など、通院につきそう必要が認められる場合も「付添看護費」を請求できます。1日あたりの金額の目安は以下の通りです。
- 自賠責保険基準 – 2,050円
- 任意保険基準 – 2,050円程度
- 裁判基準 – 3,300円
3. 入院雑費 – 入院中にかかる日用品雑貨費、通信費など
実費ではなく、1日あたりの定額が支払われる
被害者が入院する場合、日用品や雑貨などを購入する諸費用がかかります。そこで以下4項目の費用をまとめて「入院雑費」として請求することができます。
- 日用品雑貨費(パジャマや下着などの衣類、洗面具、食器などの購入費)
- 栄養補給費(医師が必要と指示する牛乳、ヨーグルト、バターなどの購入費)
- 通信費(電話代や切手代など)
- 文化費(雑誌や新聞代、テレビやラジオのレンタル料など)
入院雑費/1日あたり1,100円or1,500円
「入院雑費」の特徴は、実費が支払われるわけではないこと。以下のように1日あたりの費用が定額化されており、領収書を提出しなくても請求できます。
- 自賠責保険基準 – 1,100円
- 任意保険基準 – 1,100円程度
- 裁判基準 – 1,500円
医師への謝礼は損害賠償の対象になる?
基本的に医師や看護師への謝礼は“必要な費用”ではなく、被害者の自発的行為とみなされます。そのため、損害賠償の対象になりづらい費用です。一部の支払いが認められた判例もありますが、全額が認められるケースは極めて少ないでしょう。
4. 通院交通費 – 入通院などにかかった交通費
電車・バスは実費。タクシー代は認められない可能性も
被害者が通院・入院・転院・退院する際の交通費は、原則として実費の全額が支払われます。具体的には、電車やバスなど公共交通機関の運賃、自家用車を利用する際の実費相当分(ガソリン代、高速道路代、駐車場料金など)です。付添看護の必要性があれば、看護費の交通費も認められることがあります。
タクシー代は被害者の年齢、ケガの程度、交通の便などで特別な事情がある場合のみに認められます。なお電車やバスの運賃と違い、領収書の提出が求められます。
原則として、見舞いの交通費は認められない
家族であっても、見舞いの交通費は原則として認められません。ただし、「被害者の症状が重く、家族が遠隔地に住んでいる」といった特別な事情があれば、相当な範囲で交通費が認められるケースがあります。
損害賠償を請求する際の注意点
保険会社の説明をうのみにせず、法的な見解を弁護士に確認
ここまで説明してきたように、入通院関連で請求できる費用には一定の基準があります。そして、常に実費の全額が支払われるとは限りません。“医師の指示”があったり、“特別な事情”があったりして必要性が認められる場合にのみ支払われる費用もあります。
また、加害者側の保険会社は支払い額をおさえようとするので、その説明をうのみにしてはいけません。法的な見解を弁護士に確認し、適正な損害賠償金を請求することをおすすめします。
- 保険会社の対応に不満がある。
- 保険会社の慰謝料提示額に納得がいかない。
- 過失割合に納得がいかない。
- 後遺障害の認定を相談したい。
「傷害事故の損害賠償」記事一覧
- 2016年7月29日
- 2016年7月29日
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