過失割合が修正されるケース~保険会社から提示された過失割合は正しい?~

この記事のポイント

  • 事故パターンごとに基本的な過失割合の目安がある
  • 基本的な過失割合に修正要素を勘案(要素ごとに5~20%ほど加算または減算)して、過失割合が決まる
  • 歩行者の加算要素は「夜間」「横断禁止場所」「幹線道路」「直前・直後横断」「佇立・後退・ふらふら歩き」など
  • 歩行者の減算要素は「幼児・児童・老人」「集団横断」「住宅・商店街」「歩車道の区別なし」「車の著しい過失」「車の重過失」など
  • 保険会社が提示する過失割合が適正とは限らない
  • 過失割合に不満があったら、弁護士に相談すべき

過失割合の基礎知識

加害者・被害者の過失の程度を表す比率

交通事故の被害者は加害者に対して損害賠償を請求できます。しかし、大半の交通事故は一方的な加害者と被害者に区別できず、たいていは被害者にも少し不注意や落ち度があると考えられます。そこで被害者の過失の程度「過失割合」に応じて、損害賠償金が減額されるのです。

たとえば被害者の過失割合が20%(加害者の過失割合は80%)とすると、賠償金も20%減額されます。仮に損害額全体が500万円の場合、賠償額は400万円になります。このような仕組みを“過失相殺”といいます。

類型化された基準をもとに保険会社が過失割合を提示

損害賠償は民事上の争いなので、警察は過失割合を決めません。判例(裁判所の判断の先例)の蓄積によって事故パターンごとに基本的な過失割合が類型化されており、その基準にそって加害者(と考えられる)側の保険会社が被害者(と考えられる)側に過失割合を提示します。そして、示談交渉や裁判などを通じて最終的な過失割合が決定します。

具体的な認定基準としては、おもに別冊判例タイムズ『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』(判例タイムズ社)が使われます。その他には通称・青い本『交通事故損害額算定基準』(日弁連交通事故相談センター本部)、通称・赤い本『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(日弁連交通事故センター東京支部)が参照されます。判例自体は共通しているので、3つの基準に大きな違いはありません。

過失割合の認定方法

事故パターンごとに“基本的な過失割合”が決まる

では過失割合はどのように決まるのでしょうか?先ほど紹介した認定基準では事故の対象(車同士、歩行者と車、バイクと車など)や場所(交差点、一般道路、高速道路など)、状況ごとに事故パターンが類型化されています。そして、実際の事故がどのパターンに該当するかによって、基本的な過失割合(基本過失相殺率)が決まります。

たとえば、信号機のある交差点で直進する車同士がぶつかった場合、信号機の表示によって基本的な過失割合が決まります。仮にどちらも赤信号で交差点に進入した場合、過失割合は50%ずつ。一方が黄信号、もう一方が赤信号で進入した場合、黄信号側の過失割合が20%、赤信号側は80%になります。

具体的事故の過失割合=事故類型ごとの過失割合±修正要素

上記はあくまで基本的な過失割合です。実際はさまざまな“修正要素”が事故に関連しており、それらを勘案したうえで最終的な過失割合が決まります。次のブロックでは、この修正要素について具体的に紹介しましょう。

過失割合の修正要素

要素ごとに5~20%ほど加算または減算

過失割合の修正要素には「加算要素」と「減算要素」があり、要素ごとに5~20%ほど加算または減算されます。歩行者と車の事故の場合、歩行者の加算要素(過失相殺率が高くなる事情)と減算要素(過失相殺率が低くなる事情)として以下の例があげられます。

歩行者の加算要素(例)

  • 夜間(日没から日の出まで)
  • 横断禁止場所
  • 幹線道路(車幅が14m以上で交通量の多い県道・国道など)
  • 直前・直後横断(飛び出しを含む)
  • 佇立(立ち止まっていること)、後退、ふらふら歩き

上記の加算要素のなかで「夜間」については少し説明が必要です。歩行者も車も条件は同じのように思えるのに、なぜ歩行者の過失割合が加算されるのでしょう?それは「車のライトによって歩行者は車を見つけやすい一方、車からは歩行者が見えにくい」と考えられているからです。

歩行者の減算要素(例)

  • 幼児(6歳未満)
  • 児童(6歳以上13歳未満)
  • 老人(おおむね65歳以上)
  • 身体障害者(道交法71条2号該当者/身体障害者用の車イスに乗っている人、目が見えずに一定のつえを携えている、または盲導犬を連れている人など)
  • 集団横断(集団登下校、多人数での横断など)
  • 住宅街・商店街
  • 歩車道の区別なし
  • 車の著しい過失
  • 車の重過失

「著しい過失」は約10%、「重過失」は約20%を加算

「車の著しい過失」とは、わき見運転など前方不注視、酒気帯び運転、時速15km以上30km未満の速度違反、ハンドルまたはブレーキの著しい操作ミスなど。これらに該当する場合、おおむね10%の過失割合(過失相殺率)が加算されます。

そして「車の重過失」とは、居眠り運転、酒酔い運転、無免許運転、時速30km以上の速度違反、嫌がらせ運転をはじめとした故意に準ずる加害などです。これらに該当する場合、おおむね20%の過失割合(過失相殺率)が加算されます。

車同士の事故、自転車事故の修正要素

車同士の事故の場合、上記の「著しい過失」「重過失」は該当する側の加算要素になります。その他の加算要素としては「大型車」「直近右折」「早回り右折」「大回り右折」「既右折」などがあげられます。

自転車事故の場合、「自転車の著しい過失」は高速度進入(おおむね時速20km以上)、無灯火、二人乗り、片手運転、酒気帯び運転など。「自転車の重過失」は制動装置不良(ブレーキ装備なし)、両手ばなし運転、酒酔い運転などがあげられます。

過失割合の確認方法

修正要素が反映されていないことも

ここまで説明してきたように、基本的な過失割合に修正要素を勘案(要素ごとに5~20%ほど加算または減算)したうえで最終的な過失割合は決まります。にもかかわらず、相手方の保険会社から提示された過失割合が“基本的な過失割合のまま”なことがあります。

もちろん、諸条件を考慮しても過失割合が変わらなかったり、そもそも修正要素がなかったりする場合も多いでしょう。しかし、注意すべきなのは修正要素が見過ごされているケース。相手方の保険会社は損害賠償金(保険金)の支払い額をおさえるため、加入者が不利になる具体的な事情を過失割合に反映しない場合があるのです。

過失割合の妥当性を弁護士に確認

事故当時の状況について当事者同士の認識が真っ向から食い違っている場合、基本的な過失割合自体が誤っている可能性があります。たとえば双方とも「青信号で交差点に進入した」と主張しているならば、どちらかがウソをついている(赤信号を無視して交差点に侵入した)かもしれません。したがって、保険会社から提示された過失割合が適正とは限らないのです。

交通事故の過失割合は損害賠償金の金額に大きな影響を与えます。もし相手方の保険会社から提示された過失割合に不満があったら、弁護士へ相談してください。事故の基本的な過失割合、修正要素の有無、交渉や裁判を通じて過失割合が変わる見込みなどを示してくれるでしょう。

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