交通事故の過失割合

どうやって弁護士は過失割合を修正するのか~認定基準や刑事記録などを確認~

この記事のポイント

  • 事故パターンごとに基本的な過失割合の目安がある
  • 過失割合は「基本的な過失割合」に「修正要素」を勘案して決まる
  • 保険会社が提示する過失割合が適正とは限らない
  • 弁護士に依頼すれば、適正な(可能性の高い)過失割合がわかる
  • 適正な過失割合を調べるため、弁護士は以下4点を行う
    ①依頼者への聞き取り②認定基準の参照③刑事記録の確認④事故現場の検証
  • 裁判をしなければ、過失割合は変わりづらい
  • 弁護士選びのポイントは「能力」「熱意」「相性」

過失割合が重要な理由

被害者の過失割合に応じて損害賠償金が減額される

過失割合とは、交通事故の当事者同士の過失の程度を表す比率です。たとえば交差点で直進する車同士がぶつかった場合、信号機の表示によって基本的な過失割合が決まります。仮に一方が黄信号、もう一方が赤信号で交差点に進入した場合、黄信号側の過失割合が20%、赤信号側は80%になります。

そして、被害者の過失割合が20%とすると、賠償金も20%減額されます。たとえば損害額全体が1,000万円の場合、賠償額は800万円になります。このような仕組みを“過失相殺”といいます。

類型化された基準をもとに保険会社が過失割合を提示

損害賠償は民事上の争いなので、警察は過失割合を決めません。判例(裁判所の判断の先例)の蓄積によって事故パターンごとに基本的な過失割合が類型化されており、その基準にそって加害者(と考えられる)側の保険会社が被害者(と考えられる)側に過失割合を提示します。そして、示談交渉や裁判などを通じて最終的な過失割合が決定します。

具体的な認定基準としては、おもに別冊判例タイムズ『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』(判例タイムズ社)が使われます。その他には通称・青い本『交通事故損害額算定基準』(日弁連交通事故相談センター本部)、通称・赤い本『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(日弁連交通事故センター東京支部)が参照されます。判例自体は共通しているので、3つの基準に大きな違いはありません。

具体的な事情によって過失割合を修正すべきケースも

保険会社は上記の認定基準を参照しているため、提示された過失割合は“それなりに妥当”な場合が多いでしょう。とはいえ、認定基準は類型化された事故パターンごとに基本的な過失割合を示したもの。どれほど過去の判例が集積されても、まったく同じ事故は存在しません。それぞれの具体的な事情によって、過失割合を修正すべきケースがあります。

【チェックポイント①】基本割合

適切な事故パターンを参照しているか

では、どうやって過失割合の妥当性を検証すればいいのでしょうか?大きなチェックポイントは「基本的な過失割合」と「修正要素」。なぜなら、このふたつを組みあわせて過失割合が決まるからです。まず前者の「基本的な過失割合」から説明しましょう。

過失割合の認定基準においては、事故の対象(車同士、歩行者と車、バイクと車など)や場所(交差点、一般道路、高速道路など)、状況ごとに事故パターンが類型化されています。そして、実際の事故がどのパターンに該当するかによって、基本的な過失割合(基本過失相殺率)が決まります。

保険会社は加入者の主張を前提に過失割合を算定している

事故当時の状況について当事者同士の認識が真っ向から食い違っている場合、そもそも基本的な過失割合が誤っている可能性があります。相手方の保険会社は加入者の主張にそった事故パターンを選んでいるので、必ずしも実際の事故(にもとづく基本的な過失割合)と一致しないのです。

また、事故状況に大きな争いがなくても、基本的な過失割合が正しいとは限りません。認定基準に記された事故パターンとまったく同じ事故は存在しないので、あくまで“実際の事故にもっとも近い事故パターン”を選ぶことになります。その選択が間違っていると、基本的な過失割合も間違っている可能性が高いでしょう。多くの弁護士は依頼者の話を聞いたうえで、この点をまず調べます。

【チェックポイント②】修正要素

個別の具体的な事情が反映されているか

「修正要素」とは、過失割合を修正すべき事情のこと。一つひとつの要素ごとに5~20%ほど、過失割合(過失相殺率)が加算または減算されます。たとえば、歩行者と車の事故の場合、以下のような修正要素が考えられます。

歩行者の加算要素(例)

  • 夜間(日没から日の出まで)
  • 横断禁止場所
  • 幹線道路(車幅が14m以上で交通量の多い県道・国道など)
  • 直前・直後横断(飛び出しを含む)
  • 佇立(立ち止まっていること)、後退、ふらふら歩き

歩行者の減算要素(例)

  • 幼児(6歳未満)
  • 児童(6歳以上13歳未満)
  • 老人(おおむね65歳以上)
  • 身体障害者(道交法71条2号該当者/身体障害者用の車イスに乗っている人、目が見えずに一定のつえを携えている、または盲導犬を連れている人など)
  • 集団横断(集団登下校、多人数での横断など)
  • 住宅街・商店街
  • 歩車道の区別なし
  • 車の著しい過失(前方不注視、酒気帯び運転、時速15km以上30km未満の速度違反、ハンドルまたはブレーキの著しい操作ミスなど)
  • 車の重過失(居眠り運転、酒酔い運転、無免許運転、時速30km以上の速度違反、嫌がらせ運転をはじめとした故意に準ずる加害など)

本来、こういった修正要素を勘案したうえで過失割合は決まります。しかし、相手方の保険会社は損害賠償金(保険金)の支払い額をおさえるため、加入者が不利になる修正要素を反映しないケースがあるのです。少なくとも、自分たちが不利になる事情を積極的に探そうとはしません。

弁護士はなにをしてくれるのか

認定基準や刑事記録などを確認し、適正な過失割合を探る

弁護士に依頼すると「基本的な過失割合」と「修正要素」をチェックしてもらえるので、適正な過失割合がわかります。訴訟を起こさないと過失割合は変わりづらい(交渉だけで相手方が譲歩するケースは少ない)ので、厳密には“適正な可能性の高い”過失割合を把握できるわけです。

では、弁護士は具体的になにをするのでしょうか?示談交渉や裁判などの前段階としては、おもに次の4点に集約されます。

過失割合を調べる4つのポイント

  1. 依頼者への聞き取り
  2. 認定基準の参照
  3. 刑事記録の確認
  4. 事故現場の検証(+※工学鑑定)

※事故現場や車に残された痕跡から事故直前の車の運動状態を把握し、事故原因を推定すること。たいてい追加費用(工学鑑定の専門家に依頼)が必要なので、実施するケースは限定的。

なお、すべての弁護士がこれらを実施するわけではありません。仮に事故状況に争いがなければ、「④事故現場の検証」を行わない可能性が高いでしょう(必ず事故現場を訪れるのは熱心な弁護士です)。①②の内容はわかりやすいので、以下のブロックでは③④について説明します。

【弁護士の調査①】刑事記録

実況見分調書などを取り寄せ、事故状況を確認

刑事記録とは、実況見分調書(人身事故の場合)や供述調書(加害者が起訴された場合)など、警察が作成した資料のことです。特に重要なのは、事故の内容や原因などが記された実況見分調書。原則として、この資料をもとに過失割合が決まりますが、相手方の保険会社が詳細を見過ごしている場合があります。

そのため、実況見分調書を調べることで修正要素のヒントが見つかったり、参照すべき事故パターン(≒基本的な過失割合)が変わったりする可能性があります。ただし、実況見分調書が絶対ではありません。特に被害者が救急搬送されて警察の実況見分に立ち会っていない場合、相手方の一方的な主張をもとに調書が作成されているおそれがあります。

【弁護士の調査②】事故現場

修正要素や依頼者の主張を裏づける状況証拠を探す

過失割合の争点によって、弁護士は事故現場を訪れて依頼者が有利になる事情を探します。たとえば、相手方が「時速15km以上30km未満の速度違反」をしていた状況証拠を示せれば、相手方の過失相殺率が10%ほど加算される可能性があります。

そもそも当事者同士の認識が真っ向から食い違っている場合、実況見分調書はアテになりません。たとえば、交差点の見通しや人通り、道路上のブレーキ痕やガードレールの損傷などを調べて、依頼者の主張を裏づける証拠(または相手方の主張の矛盾を示す証拠)を探します。

過失割合の争いに強い弁護士の選び方

徹底的に調査する熱意や能力はあるか

くりかえしになりますが、相手方の保険会社から提示された過失割合は“それなりに妥当”な場合が多いでしょう。とはいえ、正しいとも言い切れないので、過失割合に不満があったら弁護士へ相談してください。事故の基本的な過失割合、修正要素の有無、交渉や裁判などを通じて過失割合が変わる見込みなどを示してくれるでしょう。

そのうえで過失割合について徹底的に争いたい場合、弁護士選びが重要です。なぜなら、事故の争点によっては信号機の表示サイクルを調べたり、目撃者を探したりすべきケースもありますが、これらは非常に手間ひまがかかるため、対応にバラつきがあるからです。

無料相談を活用して、複数の弁護士を比較

また、弁護士に依頼したからといって、過失割合の修正に直結する決定的証拠はなかなか見つからないもの。たいていは小さな状況証拠や事情を積み上げて、裁判で法的な論理展開を試みます。ときには尋問で相手方の主張の矛盾をついて、有利な判決を得ようとするでしょう。つまり、弁護士の能力や熱意によって結果が変わりえるのです。

最近は初回相談を無料で受けつけている法律事務所が多いので、複数の弁護士に会って話を聞いてみましょう。実際に依頼するかどうかは、その後の判断でかまいません。それでも弁護士の能力や熱意がわからないときは、相談者に接する姿勢や人間的な相性を重視することをおすすめします。

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