傷害事故の損害賠償

交通事故によるケガで、病院への入通院・治療中の休業など被害を受けた場合の損害賠償について

PTSDに対する損害賠償は認められる?~後遺障害の認定を受けるためには

この記事のポイント

  • PTSDとは、強烈な恐怖体験によって心に大きな傷を負い、日常生活に支障をきたす障害
  • 医師がPTSDと診断しても、裁判所が認めるとは限らない
  • PTSDに認められなくても、後遺障害として損害賠償に反映される場合がある
  • 後遺障害の適正な認定を受けるために、事故直後から精神科を受診すべき
  • PTSDやうつ病など「非器質性精神障害」の損害賠償には争点が多い

医師にPTSDと診断されたら

診断書があっても、裁判所は簡単に認めない

交通事故の被害者は、肉体的にも精神的にも苦痛を受けます。こういった苦痛に対する補償は慰謝料として支払われ、入通院期間や後遺障害の重さなどに応じて金額が決まります。
では事故が原因でPTSD(Post Traumatic Stress Disorder/心的外傷後ストレス障害)と診断された場合、その被害を反映した損害賠償を受けられるのでしょうか?

結論からいえば、PTSDに対する損害賠償は簡単には認められません。そもそも医師がPTSDと診断していても、裁判所が追認するとは限らないのです。
ただし、後遺障害に認定されて損害賠償に反映される場合があります。この分野は複雑で多くの争点があるので、順を追って説明していきましょう。

そもそもPTSDとは?

PTSDとは、強烈な精神的ショック(外傷体験)によって心に大きな傷を負い、時間が経ってからも日常生活に支障をきたす障害です。もともとはベトナム戦争から帰還したアメリカ兵が深刻な精神的障害を発症したことから研究が進み、医学的な概念として広く認められるようになりました。

現在では震災などの自然災害、火事、事故、暴力や犯罪被害などもPTSDの原因になると考えられています。具体的な症状としては、フラッシュバック(過去の出来事や情景が鮮明に思い出されること)、パニック、うつ状態、睡眠障害、不安、いらつき、集中困難などがあげられます。

PTSDの6つの診断基準

PTSDの診断基準は複数ありますが、アメリカ精神医学会による「DSM―IV」基準を使うことが一般的です。具体的には、以下6つ(A~F)の基準で構成されています。

A)以下の2条件を備えた外傷的出来事の体験がある

  • 実際に危うく死亡したり、重傷を負ったりするような(あるいは危うくそのような目にあいそうな)出来事、あるいは自分もしくは他人の身体への切迫した危機状況を体験したり、目撃したり、直面したりした。
  • 患者が強い恐怖心や無力感や戦慄という反応を示している。

B)次のいずれかの形で、外傷的な出来事がくり返し再体験され続けている

  • その出来事の記憶がイメージや考えや知覚などの形で、追い払おうとしてもくり返し襲ってくる。
  • その出来事についての悪夢をくり返し見る。
  • その出来事がくりかえされているかのように行動したり、感じたりする(再体験の錯覚・幻覚や解離性フラッシュバックも含む)
  • その出来事の一面を象徴するような、あるいは似通った内的・外的な刺激に直面したときに強い心理的苦痛が生じる。
  • その出来事の一面を象徴するような、あるいは似通った内的・外的な刺激に対して、生理的反応が起きる。

C)当該の外傷に関係する刺激を執拗にさけ、全般的な反応性のマヒが執拗に続く状態が以下の3項目以上でみられる

  • その外傷に関係する思考や感情や会話をさけようとする。
  • その外傷を思い起こさせる行動や場所や人物をさけようとする。
  • その外傷の要所が思い出せない。
  • 重要な行動に対する関心や、その行動へのかかわりが著しく減少している。
  • 他者に対する関心がなくなった、または他者と疎遠になった感覚がある。
  • 感情の範囲がせばまった(例:愛情を抱くことができない)
  • 未来の奥行きがせばまった感覚(例:結婚、子どもの誕生、通常の寿命などを期待しなくなる)。

D)高い覚醒亢進状態を示す症状の持続が以下の2項目以上で示される

  • 入眠や睡眠状態の持続が難しい
  • 易刺激性(ささいなことですぐに不機嫌になる性質)や怒りの爆発がある
  • 集中が難しい
  • 過度の警戒心がみられる
  • 過度の驚愕反応がみられる

E)障害(基準B・C・Dの症状)が1ヵ月以上持続する

F)障害のため、社会的・職業的に、あるいはその他の重要な領域で臨床的に著しい苦痛や機能の障害がある

補足事項
急性 症状の持続期間が3ヵ月未満の場合
慢性 症状の持続期間が3ヵ月以上の場合
発症遅延型 ストレス因子から6ヵ月以上経ってから発症した場合

ポイントは「強烈な恐怖体験による外傷的出来事かどうか」

これらの基準をもとにPTSDが医学的に診断されます。ただし、前述したように、PTSDの診断書があるだけでは裁判所は認定しません。
なかでも厳格に判断するのは「強烈な恐怖体験による外傷的出来事かどうか」という点。
したがって、本人の重傷や同乗者の死をともなわない事故の場合、PTSDが認められる可能性は極めて低いでしょう。

後遺障害の認定を受ける条件

PTSDでなくても後遺障害に該当する?

裁判所がPTSDと認めなくても、損害賠償にまったく反映されないとは限りません。非器質性精神障害(脳に物理的損傷がない精神障害)による後遺障害に認定され、慰謝料や逸失利益として反映される可能性があります。

非器質性精神障害にはPTSDのほか、うつ病、パニック障害、外傷性神経症、不安神経症、強迫神経症、恐怖症、心気神経症など、さまざまな疾患があります。これらが後遺障害として認定されるには、「労災保険の障害等級認定基準」を満たさなければなりません。

後遺障害にあたる「非器質性精神障害」の要件

具体的には(ア)の精神症状のうち、ひとつ以上が認められることが必要です。なおかつ(イ)の能力に関する判断項目のうち、ひとつ以上の能力について障害(能力の欠如や低下)が認められる必要があります。

後遺障害にあたる「非器質性精神障害」の要件
(ア)精神症状 (イ)能力に関する判断項目
(1)抑うつ状態
(2)不安の状態
(3)意欲低下の状態
(4)慢性化した幻覚・妄想性の状態
(5)記憶または知的能力の障害
(6)その他の障害(衝動性の障害、不定愁訴など)
(1)身辺日常生活
(2)仕事・生活に積極性・関心を持つこと
(3)通勤・勤務時間の厳守
(4)普通に作業を持続すること
(5)他人との意思伝達
(6)対人関係・協調性
(7)身辺の安全保持、危機の回避
(8)困難・失敗への対応

等級は「9級」「12級」「14級」の3段階

非器質性精神障害の後遺障害等級は、その程度に応じて「9級」「12級」「14級」の3段階に区分されています。
以下の表は各等級の基準を簡単にまとめたもの。日常生活への影響などを示せなければ、後遺障害に認定されないケースもあります。

非器質性精神障害の後遺障害等級 労災における認定基準
9級 通常の労務はできるが、就労可能な職種が相当程度に制限される
12級 通常の労務はできるが、多少の障害を残す
14級 通常の労務はできるが、軽微な障害を残す

保険会社に主張されやすい3つの争点

認定基準を満たしても十分な賠償を受けられない?

非器質性精神障害は身体的な損傷がなく、やがて完治する可能性があるため、後遺障害の認定が難しいもの。加害者側の保険会社はその弱点をついてくるので、注意してください。そこで代表的な3つの争点を紹介します。

① 交通事故と障害の因果関係

因果関係を示すためのポイントは事故状況、受傷内容、精神症状の出現時期、専門医への受診状況。具体的には「事故直後から精神症状が出現している」という旨が診断書に記載されていれば、因果関係が認められやすいでしょう。そのため、事故で大きな精神的ショックを受けたら、早めに精神科などを受診してください。

それをしないまま事故後に職を失ったり、他のトラブルに巻きこまれたりすると、交通事故と精神障害の因果関係が疑われやすくなります。もし因果関係が認められたとしても、被害者の性格など他の要因を考慮して賠償金が減額されるケースもあります(素因減額)。

② 適切な治療・症状固定の判断

事故直後に専門医の診断を受けるだけでなく、その後も継続的に治療を受けることが大切です。なぜなら、認知行動療法や薬物療法といった適切な治療を受けていない場合、(治療を受けていれば障害が治っていた可能性があるため)後遺障害に認定されない可能性があるからです。

また、非器質性精神障害は不治の病ではありません。ある程度の期間が経つと治る場合があるため、症状固定の時期を判断するのは困難です。したがって「回復の見込みを専門医が適切に判断していたかどうか」について争われるケースもあります。

③ 労働能力喪失期間・喪失率

非器質性精神障害は一定期間後に完治したり、症状が軽くなったりする可能性が高いと考えられています。そのため、後遺障害による「労働能力喪失期間」が通常よりも短く提示されやすいでしょう。その結果、逸失利益の金額が低くなります。

同様の考え方により、「労働能力喪失率」についても通常より低く提示される場合がありますが、保険会社が示す数字が妥当とは限りません。専門医の診断書や意見書など具体的な資料をもとに主張すれば、労働能力喪失期間も含めて変更される可能性もあります。

納得のいく賠償金を得るために

後遺障害にくわしく、相性のいい弁護士に依頼

ここまで記してきた通り、PTSDをはじめとした「非器質性精神障害」の損害賠償には数多くの争点が存在します。基本的に保険会社は賠償金の支払い額を抑えようとするので、その説明をうのみにしてはいけません。早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

とはいえ、精神的な障害はデリケートな問題です。依頼する際は後遺障害分野の実績だけでなく、人間的な相性も見極めたうえで選んでください。最近は初回相談を無料にしている法律事務所が多いので、複数の弁護士からアドバイスを聞いてみましょう。信頼できる専門家の力を借りれば、泣き寝入りせずに納得のいく損害賠償を受けられるはずです。

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