当面の生活に困ったら「仮渡金」を自賠責保険に請求!~損害賠償金の前払い制度~

この記事のポイント

  • 加害者側と示談・和解などが成立しなければ、損害賠償金は支払われない
  • 自賠責保険に「仮渡金」を請求すれば、当座の資金が支払われる
  • 支払い時期は請求から約1週間後。損害確定後、超過分や不足分を調整する
  • 金額は死傷の程度によって4段階(290万円/40万円/20万円/5万円)
  • 加害者が任意保険に加入していれば、原則として治療費は前払いされる

いつ損害賠償金は支払われるのか?

原則的には示談・和解の成立後、または判決の確定後

交通事故の被害者は加害者に対して損害賠償を請求することができます。ただし、そのタイミングは原則として事故による損害が確定した後。つまり、治療が終わった後(治療費や入通院慰謝料などの確定後)や症状固定の後(後遺障害慰謝料や逸失利益などの確定後)にならなければ、損害賠償金を一括請求できないのです。

さらに請求したからといって、すぐに損害賠償金(保険金)が支払われるわけではありません。支払いは加害者側との示談・和解の成立後、または判決の確定後になります。特に事故状況の認識などが相手方と食い違っていると歩み寄りが難しく、示談交渉は容易にまとまりません。とはいえ裁判に発展すれば、決着まで最短でも半年はかかるでしょう。

長期にわたる被害者の立て替え払いを防ぐ制度

でも、これでは被害者が治療費や休業損害などを先に負担しなければいけません。すると生活が苦しくなったり、治療費が支払えなくなったりする可能性が生じます。そこで被害者を保護するために、自賠責保険では「仮渡金」制度が設けられています。これは交通事故による損害全体が確定する前に、当座の資金が支払われるもの。いわば損害賠償金の前払い制度です。

なお、自賠責保険の請求には「被害者請求」というルートがあります。この手法を使えば、加害者側との示談や和解などが成立する前に自賠責保険の保険金が支払われます。とはいえ、請求できるタイミングは原則として損害確定後。治療が終わって(または症状が固定して)自賠責の調査が終わるまでは、保険金を受け取れません。

「仮渡金」制度の概要と金額

支払い時期は請求から約1週間後

交通事故で亡くなったり、重傷を負ったりした場合はすぐに仮渡金を請求できます(請求は1回のみ)。支払われる時期は請求してから約1週間後。手続きの手間はかかるものの、それ以外のデメリットはありません。損害が確定した後、仮渡金のもらいすぎが判明すると超過分の返済義務が生じますが、大半は不足分を受け取る結果になります。

特に加害者が任意保険に加入している場合は、たとえ自賠責保険の仮渡金をもらいすぎたとしても、全体の保険金額(自賠責保険+任意保険)と比較すると足りない場合が多いでしょう。仮渡金制度は最低限のセーフティーネットなので、遠慮せずに活用してください。

請求時に必要な書類

  • 仮渡金支払請求書
  • 交通事故証明書
  • 事故発生状況報告書
  • 医師の診断書または死体検案書
  • 請求者の印鑑証明
  • 委任状および委任者の印鑑証明(請求権者が複数いる場合)
  • 戸籍謄本(死亡事故の場合)

金額は「290万円」「40万円」「20万円」「5万円」の4段階

では、仮渡金はいくら支給されるのでしょうか?その金額は死傷の程度によって4段階に分けられています。以下に具体的な金額とそれぞれの条件を紹介しましょう(すべて1名あたりの金額)。

①290万円-死亡者

②40万円-以下の傷害を受けた者

  • 脊柱の骨折で脊髄を損傷したと認められる症状を有する場合
  • 上腕または前腕骨折で合併症を有する場合
  • 大腿または下腿の骨折
  • 内臓破裂で腹膜炎を起こした場合
  • 14日以上入院を要する傷害で30日以上の医師の治療が必要な場合

③20万円-以下の傷害を受けた者

  • 脊柱の骨折
  • 上腕または前腕の骨折
  • 内臓破裂
  • 入院を要する傷害で30日以上の医師の治療を必要とする場合
  • 14日以上の入院を必要とする場合

④5万円-以下の傷害を受けた者

  • 11日以上の医師の治療を要する場合

その他の前払い制度

自賠責保険の「内払金」制度は2008年に廃止

被害者保護の観点から、かつて自賠責保険には仮払金の他に「内払金」という制度もありました。これは治療費や休業損害などの損害額が10万円を超えるたびに何度も支払いを請求できるもの(ケガの場合、限度額の120万円まで)。2008年に廃止され、本請求と統一されました。

任意保険会社による内払い(前払い)は治療費のみ

任意保険では、実務的に治療費が内払い(前払い)されています。これは損害全体が確定する前に、加害者側の任意保険会社が被害者の治療費を医療機関に直接支払う仕組み。法律に定められた制度ではなく、任意保険会社の内規にもとづいた運用実務です。つまり法的拘束力がないため、保険会社の判断で一方的に打ち切られるケースがあります。詳細は以下の記事を参照してください。

保険会社から「治療の打ち切り」を求められた!その理由と3つの対処法

仮渡金の手続きに不安を感じたら、弁護士に相談をv

治療費の負担などで当面の生活に困ったとき、自賠責保険に仮渡金を請求すれば、示談成立前でも当座の資金を受け取ることができます。手続きの手間以外のデメリットはない制度なので、交通事故のケガで治療が長引くような場合は活用するといいでしょう。

仮渡金の請求手続きに不安を感じたり、仮渡金の制度についてわからないことがあったりしたら、弁護士への相談をおすすめします。

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