交通事故の後遺障害12級の慰謝料相場は?その症状と認定基準も解説!

この記事のポイント

後遺障害12級の慰謝料相場「自賠責基準」93万円→「裁判基準」290万円

弁護士に依頼すれば、「自賠責基準」による最低限の慰謝料ではなく、「裁判基準」にもとづいた適正な慰謝料を得られる。その増額目安は170万円~200万円ほど。裁判をすれば満額(290万円)、示談交渉では9割程度の金額(約260万円)になる可能性が高い。

※上記の金額は「後遺障害慰謝料」を示したものです。損害賠償金には、その他に「入通院慰謝料」「治療関係費」「休業損害」「逸失利益」などが含まれます。
※示談交渉によって得られる慰謝料は個別のケースによって異なります。

弁護士に依頼すると、どのくらい慰謝料が増額する?

自賠責保険による慰謝料から200万円近くアップ!

ケガが治った後でも身体に残っている障害のことを「後遺障害」といいます。この障害が交通事故のせいで生じた場合、加害者に「後遺障害慰謝料」を請求することができます。そこで本稿では、後遺障害12級に対する慰謝料や認定基準などについて、わかりやすく解説していきます。

自賠責保険では必要最低限の補償しか支払われない

後遺障害慰謝料は「自動車損害賠償保障法」に定められた後遺障害の等級と支払い基準によって計算されます。強制保険である自賠責保険では、後遺障害12級の慰謝料は「93万円」。しかし、この「自賠責基準」は国が決めた必要最低限の補償にすぎません。

裁判では、もっとも慰謝料の高い基準が使われる

慰謝料の算出基準には「自賠責基準」の他に「任意保険基準」「裁判基準(弁護士基準)」があります。3つの基準のなかでもっとも金額が高くなるのは「裁判基準」です。これは過去の判例にもとづいた法的に適正な基準であり、弁護士が相手方の保険会社と交渉するときに使用されます。

裁判基準による後遺障害12級の慰謝料は290万円

後遺障害12級の場合、裁判基準による後遺障害の慰謝料は「290万円」。裁判になれば、保険会社はこの金額を支払うことになります。したがって、弁護士に依頼することで200万円近くアップする可能性が高いのです(さらに入通院慰謝料も裁判基準にもとづいた金額にアップします)。

後遺障害12級の慰謝料を増額させる際の注意点

裁判には半年以上の期間が必要。示談交渉でも170万円近く増額

後遺障害の慰謝料をはじめ、弁護士による損害賠償金の請求は基本的に示談交渉から始まります。訴訟を起こせる弁護士が交渉することによって、保険会社の譲歩を引き出せるのです。一般的に裁判は半年以上の期間がかかるため、早期解決を望む場合は示談交渉がいいでしょう。

示談交渉で譲歩を引き出せる金額は「裁判基準」の9割前後

示談交渉後の慰謝料額は弁護士の交渉力や保険会社の対応などによって変わりますが、おおむね裁判基準の9割前後です。つまり、後遺障害12級では「約260万円」。自賠責基準から170万円近く増額します。

保険会社の「これが最大限の金額」という説明は正しくない?

被害者本人が相手方の保険会社と交渉しても、裁判基準による慰謝料が提示されることはありません。担当者から「これが最大限の金額です」などと増額した慰謝料を説明されるケースもありますが、それは自賠責基準よりも少し高い程度。「任意保険基準」と呼ばれる各保険会社の独自基準で計算しただけです。

保険会社は支払い額をおさえたいので、丁寧に説明しない

つまり、担当者の説明は「社内基準では最大限の金額」という意味にすぎません。裁判基準ではさらに高い金額になるとわかっていても、自社の支出(保険金の支払い額)が増えるだけ。それゆえ、丁寧に説明してくれないのです。

後遺障害の適正な等級認定を受けるためのポイント

事故発生当初から定期的に通院し、一貫した症状を訴える
一般的な意味での「後遺症」と、法律で定められた「後遺障害」は少し定義が異なります。「後遺障害」に認められるためには、以下のような条件を満たし、なおかつ診断書や資料などで存在を証明する必要があります。

  1. 事故の状況と被害者が医師に申告する症状の程度が一致している
  2. 事故発生当初から医療機関へ定期的に通院している
  3. 事故当初から被害者が訴える症状が続いており、一貫性がある
  4. 症状が重いと認められ、日常生活において症状が継続している
  5. 症状と矛盾のない画像診断や検査結果がある

「仕事が忙しいから」と通院をおこたるのは禁物

たとえば「仕事が忙しいから」と痛みをガマンして通院をおこたると、上記②の条件が満たされません。「定期的に通院していない」=「たいしたケガではない」=「後遺障害にはあたらない」と判断される可能性があります。

重要な認定資料「後遺障害診断書」の作成に不慣れな医師も

後遺障害第12級の労働能力喪失率は14%。健常者とさほど変わらない症状もあるため、医師との密なコミュニケーションが重要になります。もしも医師に自覚症状を詳しく伝えなければ、実際の障害と診断書の内容にズレが生じかねません。

通院期間中から交通事故の分野に精通した弁護士に相談すべき

後遺障害の適正な等級認定を受けるためには、カルテや診断書はもちろん、「後遺障害診断書」を詳細かつ正確に記載してもらうことが重要です。医師のなかには後遺障害診断書の作成に不慣れな方もいるので、通院期間中から交通事故の分野に精通した弁護士に相談することをおすすめします。

後遺障害12級の認定基準とは?

14分類のいずれかにあてはまれば、認定を受けられる

後遺障害の等級はもっとも重いものが1級、そこから軽くなるごとに級数が増え、もっとも軽い等級が14級です。さらに障害を負った部位によって、後遺障害12級は1号から14号に分類されています。

的確な認定を受けて、適正な損害賠償金を請求

適正な損害賠償金を請求するためには、的確な認定を受ける必要があります。後遺障害12級は等級を決める項目が多いので、後遺障害にくわしい弁護士に確認してもらいましょう。

以下14分類のいずれかにあてはまれば、原則として12級に認定されます(13級の後遺障害が複数残っていると、併合で12級に認定される場合があります)。

後遺障害12級/14段階の分類
1号 1眼の眼球に著しい調節機能障害、または運動障害を残すもの
2号 1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3号 7歯以上に対し歯科補綴をくわえたもの
4号 1耳の耳殻の大部分を欠損したもの
5号 鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、または骨盤骨に著しい変形を残すもの
6号 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
7号 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの
8号 長管骨に変形を残すもの
9号 1手の小指を失ったもの
10号 1手の人差し指、中指、または薬指の用を廃したもの
11号 1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの、または第3の足指以下の3の足指を失ったもの
12号 1足の第1の足指、または他の4の足指の用を廃したもの
13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14号 外貌に醜状を残すもの

後遺障害12級と判断される具体的な症状

1)1眼の眼球に著しい調節機能障害、または運動障害を残すもの

調節機能障害とは、遠くのものや近くのものを見たときに「ピントを合わせる機能に障害が起こること」です。この機能が2分の1以下になった場合に“著しい調節機能障害”と判断されます。また、眼だけでものを追える範囲(注視野)が2分の1になった場合に“著しい運動障害”とされます。

2)1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの

「まぶたを開けているつもりでも、十分に開かずに瞳孔が隠れたまま」「まぶたを閉じているつもりでも、実際には閉じられない」「まばたきがうまくできない」などの状態が“著しい運動障害”と判断されます。

3)7歯以上に対し歯科補綴をくわえたもの

歯科補綴(ほてつ)とは、歯科医による適切な治療のこと。交通事故により歯が失われたり欠けたりした後、「差し歯を入れたりブリッジなどで義歯をつけたりした場合」です。日常生活に不便はなくても、後遺障害として認められます。

4)1耳の耳殻の大部分を欠損したもの

外側に張り出している耳殻(耳)を半分以上失った状態です。一時的に音が聞こえにくくなりますが、聴力に著しい影響は出ません。むしろ「外観の醜状障害」として、7級に認定されるケースが多いでしょう。

5)鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、または骨盤骨に著しい変形を残すもの

脊柱(背骨)以外の大きな骨が骨折し、治癒する際に著しい変形をしてしまった状態です。骨の変形が原因で運動能力に後遺障害が残った場合、さらに等級が上がります。

6)1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

片方の上肢の3大関節(肩・ひじ・手首)のうち、ひとつの関節に機能障害が残ってしまった場合です。関節の機能障害とは「可動域が4分の3以下になった」「手のひらを上に向けたり、下に向けたりする運動(回内・回外運動)の可動域が2分の1になった」「すぐに脱臼しやすくなった」などの状態をさします。

7)1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

片方の下肢の3大関節(股関節・ひざ・足首)のうち、ひとつの関節に機能障害が残ってしまった場合です。機能障害については、6号の上肢の場合とほぼ同じです。

8)長管骨に変形を残すもの

腕や足の状態に関係なく、長管骨に障害が残った場合です。長管骨とは、腕の上腕骨、橈骨、尺骨。足の大腿骨、腓骨、脛骨のこと。具体的な症状は「治療の際に骨の癒着がうまくいかない」「骨がねじれたり曲がったりしてしまう」などの状態です。硬性補装具が必要な場合、等級が7級や8級に上がることもあります。

9)1手の小指を失ったもの

左右どちらかの小指を失った場合です。小指を失っても日常生活に影響ないと思われがちですが、握力が著しく落ちてしまいます。そのため、職種によっては労働能力の大きな喪失となります。

10)1手の人差し指、中指、または薬指の用を廃したもの

ここでの“用を廃した”とは「指の長さが半分になった」「第2関節より先の可動域が2分の1以下になった」「指先の痛みや温度、あるいは触感などの感覚が完全に失われた」などの状態をさします。

11)1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの、または第3の足指以下の3の足指を失ったもの

片方の足の「人差し指を失った」「人差し指ともう1本の指(親指以外)を失った」「中指・薬指・小指を失った」などの状態をさします。

12)1足の第1の足指、または他の4の足指の用を廃したもの

片方の足の親指、または他の4本の指が用を廃した場合です。ここでの“用を廃した”とは「親指の第1関節が2分の1の長さになった」「親指以外の指が根元から第1関節の間で切断された」などの状態をさします。

13)局部に頑固な神経症状を残すもの

いわゆる“むちうち症”が代表的で、首や肩の痛み、手足のしびれなどがあげられます。ただし、むちうち症は正式な傷病名ではありません。医学的には「頸椎捻挫」「頸部挫傷」「外傷性頸部症候群」などに分類されます。

むちうち症は医学的な証明が難しいケースが多く、認定の判断が分かれやすい症状です。レントゲンやMRIなどの画像検査で異常が見つかれば、後遺障害12級に認定される可能性が高いでしょう。自覚症状のみの場合、14級または非該当になります。

14)外貌に醜状を残すもの

頭・顔・首(外貌)に大きな傷跡(醜状)が残ってしまった場合です。具体的には「頭にニワトリの卵大より大きい傷跡が残った」「顔に10円玉サイズ以上の傷跡や長さ3cm以上の線上の傷跡が残った」「耳の一部が欠けてしまった」などの状態をさします。

以前は同じ傷の程度だと女性の方が高い等級になっていましたが、男女平等の見地から2010年に改定されました。

後遺障害の認定サポートを行っている弁護士に相談

あくまで医師は治療のプロであって、後遺障害認定の専門家ではありません。被害者本人は上記の分類にあてはまると思っていても、カルテや診断書、検査結果などの記載内容によって12級に認定されない可能性もあります。適正な等級認定を得るためには、後遺障害の認定サポートを行っている弁護士に相談したほうがいいでしょう。

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