交通事故の後遺障害5級の慰謝料相場は?その症状と認定基準も解説!

この記事のポイント

後遺障害5級の慰謝料相場「自賠責基準」599万円→「裁判基準」1,400万円

弁護士に依頼すれば、「自賠責基準」による最低限の慰謝料ではなく、「裁判基準」にもとづいた適正な慰謝料を得られる。その増額目安は660万円~800万円ほど。裁判をすれば満額(1,400万円)、示談交渉では9割程度の金額(約1,260万円)になる可能性が高い。

※上記の金額は「後遺障害慰謝料」を示したものです。損害賠償金には、その他に「入通院慰謝料」「治療関係費」「休業損害」「逸失利益」などが含まれます。
※示談交渉によって得られる慰謝料は個別のケースによって異なります。

弁護士に依頼すると、どのくらい慰謝料が増額する?

自賠責保険による慰謝料から800万円ほどアップ!

ケガが治った後でも身体に残っている障害のことを「後遺障害」といいます。この障害が交通事故のせいで生じた場合、加害者に「後遺障害慰謝料」を請求することができます。そこで本稿では、後遺障害5級に対する慰謝料や認定基準などについて、わかりやすく解説していきます。

自賠責保険では必要最低限の補償しか支払われない

後遺障害慰謝料は「自動車損害賠償保障法」に定められた後遺障害の等級と支払い基準によって計算されます。強制保険である自賠責保険では、後遺障害5級の慰謝料は「599万円」。しかし、この「自賠責基準」は国が決めた必要最低限の補償にすぎません。

裁判では、もっとも慰謝料の高い基準が使われる

慰謝料の算出基準には「自賠責基準」の他に「任意保険基準」「裁判基準(弁護士基準)」があります。3つの基準のなかでもっとも金額が高くなるのは「裁判基準」です。これは過去の判例にもとづいた法的に適正な基準であり、弁護士が相手方の保険会社と交渉するときに使用されます。

裁判基準による後遺障害5級の慰謝料は1,400万円

後遺障害5級の場合、裁判基準による後遺障害の慰謝料は「1,400万円」。裁判になれば、保険会社はこの金額を支払うことになります。したがって、弁護士に依頼することで800万円ほどアップする可能性が高いのです(さらに入通院慰謝料も裁判基準にもとづいた金額にアップします)。

後遺障害5級の慰謝料を増額させる際の注意点

裁判には半年以上の期間が必要。示談交渉でも660万円ほど増額

後遺障害の慰謝料をはじめ、弁護士による損害賠償金の請求は基本的に示談交渉から始まります。訴訟を起こせる弁護士が交渉することによって、保険会社の譲歩を引き出せるのです。一般的に裁判は半年以上の期間がかかるため、早期解決を望む場合は示談交渉がいいでしょう。

示談交渉で譲歩を引き出せる金額は「裁判基準」の9割前後

示談交渉後の慰謝料額は弁護士の交渉力や保険会社の対応などによって変わりますが、おおむね裁判基準の9割前後です。つまり、後遺障害5級では「約1,260万円」。自賠責基準から660万円ほど増額します。

保険会社の「これが最大限の金額」という説明は正しくない?

被害者本人が相手方の保険会社と交渉しても、裁判基準による慰謝料が提示されることはありません。担当者から「これが最大限の金額です」などと増額した慰謝料を説明されるケースもありますが、それは自賠責基準よりも少し高い程度。「任意保険基準」と呼ばれる各保険会社の独自基準で計算しただけです。

保険会社は支払い額をおさえたいので、丁寧に説明しない

つまり、担当者の説明は「社内基準では最大限の金額」という意味にすぎません。裁判基準ではさらに高い金額になるとわかっていても、自社の支出(保険金の支払い額)が増えるだけ。それゆえ、丁寧に説明してくれないのです。

後遺障害の適正な等級認定を受けるためのポイント

事故発生当初から定期的に通院し、一貫した症状を訴える

一般的な意味での「後遺症」と、法律で定められた「後遺障害」は少し定義が異なります。「後遺障害」に認められるためには、以下のような条件を満たし、なおかつ診断書や資料などで存在を証明する必要があります。

  1. 事故の状況と被害者が医師に申告する症状の程度が一致している
  2. 事故発生当初から医療機関へ定期的に通院している
  3. 事故当初から被害者が訴える症状が続いており、一貫性がある
  4. 症状が重いと認められ、日常生活において症状が継続している
  5. 症状と矛盾のない画像診断や検査結果がある

重要な認定資料「後遺障害診断書」の作成に不慣れな医師も

上記の条件を満たすためには、医師との密なコミュニケーションが重要です。医師に自覚症状を詳しく伝えなければ必要な検査が行われず、実際の障害と診断書の内容にズレが生じかねません。

通院期間中から交通事故の分野に精通した弁護士に相談すべき

後遺障害の適正な等級認定を受けるためには、カルテや診断書はもちろん、「後遺障害診断書」を詳細かつ正確に記載してもらうことが重要です。医師のなかには後遺障害診断書の作成に不慣れな方もいるので、通院期間中から交通事故の分野に精通した弁護士に相談することをおすすめします。

後遺障害5級の認定基準とは?

8分類のいずれかにあてはまれば、認定を受けられる

後遺障害の等級はもっとも重いものが1級、そこから軽くなるごとに級数が増え、もっとも軽い等級が14級です。さらに障害を負った部位によって、後遺障害5級は1号から8号に分類されています。

的確な認定を受けて、適正な損害賠償金を請求

後遺障害5級の労働能力喪失率は79%なので、重い障害といえます。仕事にも日常生活にも大きな支障をきたすため、的確な認定を受けて適正な損害賠償金を請求すべきです。保険金も高額になるため、示談交渉よりも裁判で争ったほうがいいでしょう。

以下8分類のいずれかにあてはまれば、原則として5級に認定されます(6級以下の後遺障害が複数残っていると、併合で5級に認定される場合もあります)。

後遺障害5級/8段階の分類
1号 1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
2号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
3号 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
4号 1上肢を手関節以上で失ったもの
5号 1下肢を足関節以上で失ったもの
6号 1上肢の用を全廃したもの
7号 1下肢の用を全廃したもの
8号 両足の足指の全部を失ったもの

後遺障害5級と判断される具体的な症状

1)1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの

交通事故が原因で失明し、視力が低下したケースに限られます。視力については「メガネやコンタクトレンズなどで視力矯正をしても0.1以下となること」が条件です。

2)神経系統の機能または精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

脳や神経系統の障害によって、簡単な作業しかできなくなってしまった場合です。“軽易な労務”には具体的な規定がないため、後遺障害診断書や補足資料(日常生活の状況を記した書類など)の内容が等級認定に大きな影響を与えるでしょう。

3)胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

おもに泌尿器系の機能障害が該当します。具体的には「肛門や尿道などの排泄器官に重い損傷を受け、人工肛門などをつけざるをえなくなった場合」などです。神経系の障害に比べると、認定基準はわかりやすいでしょう。

4)1上肢を手関節以上で失ったもの

肘関節から手首までの間で片腕を切断してしまった場合です。肩関節から肘関節の間で失った場合は4級となり、両腕を失った場合は1級となります。

5)1下肢を足関節以上で失ったもの

ひざ下から足関節の間で片足を失ってしまった場合です。具体的には「膝関節と足関節の間で切断」「足関節において脛骨および腓骨と距骨を離断」という状態です。両足を失った場合は1級となります。

6)1上肢の用を全廃したもの

マヒなどで片腕がまったく動かなくなるか、可動域が10%以内に制限されてしまった場合です。具体的には「肩、ひじ、手関節の完全強直」「片方の上肢の可動域が10%以内に制限され、手指の障害がくわわるもの」などが該当します。

7)1下肢の用を全廃したもの

マヒなどで片足がまったく動かなくなるか、可動域が10%以内に制限されてしまった場合です。具体的には「股、ひざ、足関節の完全強直」「片方の下肢の可動域が10%以内に制限され、足指の障害がくわわるもの」などが該当します。

8)両足の足指の全部を失ったもの

“足の指を失った”とは「親指については第1関節より先を失った」「その他の指については第2関節より先を失った」状態をさします。また、リスフラン関節(足の甲の中央)より足先を失った場合も該当します。

後遺障害の認定サポートを行っている弁護士に相談

あくまで医師は治療のプロであって、後遺障害認定の専門家ではありません。被害者や家族は上記の分類にあてはまると思っていても、カルテや診断書、検査結果などの記載内容によって5級に認定されない可能性もあります。適正な等級認定を得るためには、後遺障害の認定サポートを行っている弁護士に相談したほうがいいでしょう。

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