加害者以外と示談するケース~加害者本人以外で損害賠償できる相手

この記事のポイント

  • 交通事故で加害者以外の人に損害賠償請求ができる代表的な例は、運行供用者責任が発生するケース。
  • 運行供用者責任が発生する場合、自動車の所有者や加害者の使用者、親やレンタカー会社などに請求できる可能性がある。
  • 運行供用者責任が発生するのは人身損害のみ。
  • 使用者責任が発生する場合には相手の使用者に損害賠償できる。
  • 監督者責任が発生する場合には相手の親や監督義務者に損害賠償できる。
  • 共同不法行為が成立すると、同乗者や医師などに損害賠償できる可能性がある。
  • 道路や駐車場の管理義務者、所有者に損害賠償できるケースもある。
  • 加害者以外の人に損害賠償請求できるかどうかがわからないなら弁護士に相談すべき。

相手から支払いを受けられない危険性

交通事故で被害に遭ったら、さまざまな損害が発生します。その場合、発生した損害については、相手に賠償してもらわないといけません。そのため、相手と示談交渉を行います。示談交渉は、交通事故にもとづく損害賠償を請求するための話合いの手続きです。そこで、多くのケースでは、示談交渉の相手は、事故の相手方本人か、その代理人としての保険会社となります。

しかし、交通事故の加害者に請求をしても、賠償金の支払いを受けられないこともあります。たとえば、相手が子どものケースやお金がないケースなどで、相手が任意保険に加入していない場合や保険が適用されない場合には、相手自身に請求をしても賠償金の支払いを受けることができないことが普通です。すると、被害者は損害についての補償を受けることができず、大変な不利益を受けることになります。

加害者以外に損害賠償請求ができる場合

加害者本人が賠償金の支払をしない場合、被害者は泣き寝入りをするしかないのでしょうか?

実はそうとも限りません。相手本人に賠償金の支払い請求ができない場合には、事故の直接の加害者以外の人に損害賠償請求をすることができる例があります。この場合、相手以外の人と示談交渉を進めることになります。

それでは、相手本人以外に損害賠償請求できるのは、どのような場合なのでしょうか?以下で、順番にご紹介します。

運行供用者責任

運転手

交通事故で相手以外の人に損害賠償ができる代表的なケースは、運行供用者責任が適用される場合です。

運行供用者責任とは

運行供用者責任とは、自賠責法3条に定められている責任です。

【自動車損害賠償保障法 3条】
自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない。

このように、運行供用者責任は、「自己のために自動車を運行の用に供する者」に成立します。具体的には、自動車の運転によって広く利益を得ている人を意味します。たとえば、自動車を人に貸して運転させていたらその貸し主(所有者)、人を雇用して運転させていたらその雇用主などが運行供用者責任を負います。つまり、自動車の運転者だけではなく、自動車の所有者などの人に賠償金を請求できる可能性があるということです。

しかも、運行供用者責任が適用される場合、通常の不法行為よりも立証責任が大きく軽減されるので、被害者が相手に賠償請求しやすくなっています。交通事故に遭って事故の直接の相手に賠償請求できそうにない場合、まずは運行供用者責任を負う人がいないかどうか、検討してみることが役に立ちます。

運行供用者責任が認められる例

それでは、運行供用者責任が認められる場合は、どのようなケースなのでしょうか?
運行供用者責任が認められるのは、自動車に対して「運行支配」を持っており、「運行利益」を得ている場合です。運行支配とは、その自動車の運行をコントロールすることができることであり、運行利益とは、その自動車の運行によって利益を得ていることです。運行供用者責任が成立するためには、この2つの要件を満たす必要があります。

典型的なケースは、以下のような場合です。

事故車の所有者

車の所有者は、運行供用者責任を負う場合があります。そこで、交通事故に遭ったとき、加害者(運転者)が他人名義の自動車を運転していたなら、まずはその所有者に対する損害賠償請求を検討すべきです。

事故車を加害者に貸していた人

運転者(加害者)が誰かから自動車を借りて運転していた場合には、その貸し主が運行供用者責任を負います。

従業員が会社の車を運転して交通事故を起こした場合の会社

従業員が会社の車を運転していた場合には、会社が車の所有者になるので、会社に運行供用者責任が発生します。たとえば、バスやタクシー、運送業者と交通事故に遭った場合には、バス会社やタクシー会社、運送業の会社に賠償請求ができます。

従業員が自分の車を業務用に使用していて事故を起こした場合の会社

従業員が自分の車を運転していた場合であっても、それを仕事のために使っていたのであれば、会社に運行供用者責任が発生する可能性があります。交通事故に遭ったときに、相手が仕事中や仕事に関連して車を運転していた場合には、雇用主に対する請求を検討すべきです。

レンタカーによる事故の場合の貸し主

レンタカーの場合には、貸し主であるレンタカー会社や車の所有者に責任追及できる可能性があります。

子会社や下請け会社に業務中に事故を起こした場合の親会社や元請け会社

雇用関係ではなく、子会社や下請け会社の従業員が業務中に事故を起こすケースもあります。このような場合、業務に関連して起こった事故である限り、親会社や元請け会社に対し、運行供用者責任を問うことができます。

子どもが自分の自動車で事故を起こした場合、維持費などを負担している親

子どもが自分の自動車を運転していた場合であっても、親が維持費などを負担している場合などには、親が運行支配と運行利益を得ていると判断されて、運行供用者責任を問うことができる可能性があります。

運行供用者責任の効果

それでは、運行供用者責任が成立すると、どのような効果があるのでしょうか?

自賠責法3条の運行供用者責任は、民法上の不法行為の特則であり、一般の不法行為よりも大きく被害者の立証責任が軽減されています。

一般の不法行為では、被害者は加害者の

  • 故意過失
  • 違法行為
  • 因果関係
  • 損害

を立証しないといけません。これらすべてを立証するのはかなり大変です。特に加害者本人以外の人に故意や過失があると証明するのはかなり難しくなることが多いです。

運行供用者責任においては、被害者は相手の故意や過失を立証する必要がありません。事故と損害の発生、その因果関係と運行供用者であることさえ立証すれば、故意過失の立証がなくても相手に賠償請求ができるのです。

ただし、全くの無過失責任というわけではありません。自賠責法3条では、以下のような免責要件が定められています。

  • 自分と運転者が自動車の運行に関して注意を怠らなかったこと
  • 被害者か運転者以外の第三者に故意や過失があったこと
  • 自動車において、構造上の欠陥や機能障害がなかったこと

そこで、この3つの免責要件を立証することができたら、運行供用者であっても損害賠償を負いません。

無過失責任と呼ばれることも!

運行供用者責任は、故意過失の立証責任が転換されているため、基本的に加害者側に過失が認められる構造になっています。加害者側が「過失がなかったこと」を立証することは非常に困難です。そこで、運行供用者責任は、「無過失責任」と呼ばれることもあります。

それほどまでに、被害者にとって使いやすいになっているということなので、是非とも覚えておきましょう。

運行供用者責任と自賠責保険

運行供用者責任を考えるときには、自賠責保険との関係を把握しておくことも大切です。運行供用者責任は、自賠責法に規定されていますが、実際に自動車の所有者にこの責任が成立する場合、加害車両が自賠責保険に加入していたら、自賠責保険からの支払いが行われます。運行供用者責任は、自賠責保険と連動して被害者を保護する機能を持っているのです。また、自賠責保険を超えた損害が発生する場合には、賠償責任者本人に支払い請求をすることも可能です。

このことを考えると、自動車を人に貸したり運転させたりすることにはリスクが高いことになるので、たいした用もないのに、遊びでの車の貸し借りなどはしない方が良いです。必要があって貸す場合には、必ず任意保険に加入しておきましょう。

人身事故のみが対象になる

運行供用者責任が適用されると、運転者(加害者)本人に資力がなくても賠償請求ができますし、過失の立証責任も転換されているので被害者に有利です。

しかし、この責任は、人身事故にしか適用されないことに注意が必要です。運行供用者責任は自賠責法に規定されていますが、自賠責法は、人身事故の被害者を救済することを目的とした法律です。そこで、自賠責保険は物損事故の場合に適用されません。物損事故の場合には、加害者本人に請求するしかないケースも多くなります。

所有権留保の場合の運行供用者責任

運行供用者責任については、「所有権留保」も問題となります。所有権留保とは、車のローンなどを組んでいるときに、ローン完済時まで車の所有者をローン会社にとどめておくことです。このことにより、ローン債務者が支払いを滞納したとき、ローン会社が車を回収することができて、取り立てを行うことができます。所有権留保は、不動産に対する抵当権などと同じ担保権の1種です。

所有権留保が利用される場合、車の所有者がローン会社になっているので、ローン会社に運行供用者責任が成立するのかが問題となります。この点、判例は、ローン会社には運行供用者責任が発生しないと判断しています。ローン会社は運行によって利益も得ていませんし、運行を支配してもいないからです(最判昭和46年1月26日)。

そこで、交通事故に遭って、相手の車がローン会社になっている場合には、基本的にローン会社には賠償金の支払い請求ができないと考えるべきです。

盗難車の場合

次に、盗難車の場合の問題があります。事故車が盗難車の場合にも、加害者と車の所有者が違うという事態が起こりますが、この場合、所有者に運行供用者責任が発生するのでしょうか?

この点についても、判例は基本的には責任の発生を否定しています。所有者は、車を勝手に運転されているのですから、運行を支配していないからです(東京高裁昭和62年3月31日)。ただし、所有者が盗難を予見することができた場合には、運行支配が認められて運行供用者責任や不法行為が成立する可能性があります。たとえば、所有者がキーをさしたまま車を放置していた場合などです。

そこで、盗難車相手に事故に遭った場合には、車の所有者に賠償請求ができるのかどうか、ケースに応じて判断することが必要になります。
わからない場合には、弁護士に相談すると良いでしょう。

相手の勤務先の会社

交通事故の加害者以外を示談交渉の相手とする場合として、代表的な例に、相手の勤務先の会社があります。この場合、運行供用者責任または使用者責任によって責任追及することができるので、以下で順番に確認します。

運行供用者責任

加害者が会社名義の車を運転していた場合には、会社が運行支配と運行利益を得ていることになるので、運行供用者責任が発生します。この場合、業務について運転していた場合ではなく、従業員が私的に会社の車を利用していた場合であっても会社に責任が発生する可能性があります。

また、加害者が自分名義の車を運転していた場合でも、それが業務に関して運転していたものであれば、会社に運行供用者責任が発生する可能性があります。

使用者責任

従業員が車を運転していて交通事故を起こした場合には、使用者責任が成立する可能性もあります。使用者責任は、通常の民法の不法行為の1種です。従業員などの使用者が、業務の執行について、不法行為を行った場合に、その使用者が不法行為責任を負います。

使用者責任が成立するためには、

  • 従業員が不法行為を行ったこと
  • 業務の執行について行われたこと
  • 使用関係があること

この3つの要件が必要であり、これらについては被害者が立証しなければなりません。そこで、使用者責任は、運行供用者責任よりもハードルが高くなることが多いです。

使用者責任が発生する場合、使用者には実際の加害者と同じだけの責任が発生するので、使用者に対しても全額の賠償請求をすることができます。

どちらが良いのか?

それでは、会社に対して損害賠償請求をする場合、運行供用者責任と使用者責任のどちらを使って請求するのが良いのでしょうか?これについては、ケースによって異なります。

事故車が会社の車であるケース

まず、相手が運転していたのが会社の車であるケースを見てみましょう。この場合、業務執行中の事故か、業務執行外の事故かによって結論が異なります。

業務執行中のケース

まず、業務執行中の場合には、運行供用者責任も使用者責任も両方成立します。そこで、被害者としては、このどちらによっても会社に責任追及をすることができます。ただ、立証責任の容易さなどからすると、運行供用者責任の方が有利になることがあります。

業務執行中でないケース

次に、業務執行中ではなかったケースを見てみましょう。この場合には、会社名義の車であっても使用者責任が発生しない可能性が高いです。これに対し、会社名義なら運行供用者責任は発生するので、運行供用者責任を追及するのが良いでしょう。

事故車が従業員の車であるケース

次に、従業員が自分の車を運転していて事故を起こしたケースを見てみましょう。

業務執行中のケース

従業員が自分の車を運転していた場合であっても、業務執行中の事故であれば使用者責任が成立します。また、この場合、会社に運行支配と運行利益が認められるため、運行供用者責任も発生する可能性が高いです。そこで、被害者は、このどちらによっても相手に賠償請求ができます。

業務執行中でないケース

従業員が自分の車を運転していて、それが業務執行中ではなかったケースでは、使用者責任も運行供用者責任も発生しない可能性が高いです。この場合には、加害者本人に請求するしかなくなります。

マイカー通勤時の事故の場合

マイカー通勤時の事故の場合にも、使用者責任や運行供用者責任が発生する余地があります。これについては、会社がマイカー通勤を認めていたかどうかによって結論が異なります。マイカー通勤を認めていたり黙認していたりした場合には、使用者責任や運行供用者責任が発生する可能性が高いです。これに対し、会社が禁止しているのに従業員が勝手にマイカー通勤をして、そのことを会社も知らなかったようなケースでは、会社には責任は発生しません。

物損事故のケース

最後に、物損事故のケースを見てみましょう。物損事故でも、業務の執行中に起こった事故であれば、使用者責任が発生します。これに対し、運行供用者責任は物損事故の場合には成立しません。

そこで、物損事故の場合には、使用者責任を追及することによって賠償金の支払いを受けるべきです。

相手が未成年の場合の親

交通事故では、相手が未成年のケースがあります。この場合、そもそも未成年者を相手に賠償金の請求ができるのかが問題となります。また、未成年者は資力がないことが普通なので、支払い請求をしても賠償金の支払いを受けられない可能性が高くなります。そこで以下では、事故の加害者が未成年の場合に、親に賠償請求ができないのか、検討してみましょう。

運行供用者責任

未成年者が交通事故を起こした場合、親に運行供用者責任が発生する可能性があります。まず、未成年者が親の所有する車を運転していたケースです。その場合、親に運行支配と運行利益が認められるので、運行供用者責任が成立します。また、未成年者が所有する車であっても、ガソリン代や保険代などの維持費を親が出していることがあります。その場合にも親に運行支配や運行利益が認められて、運行供用者責任が発生する余地があります。

監督者責任

未成年が加害者の場合、車が未成年者の所有であり、親が維持費を出したり車を管理したりしている事情もなければ、運行供用者責任は成立しません。その場合でも、親に責任が発生することがないのかが問題となります。

この場合、親に監督者責任が発生する可能性があります。監督者責任とは、他者に対する監督義務がある人に発生する責任で、民法上の不法行為責任の1種です。民法714条に規定されています。監督者責任が発生するためには,以下の要件を満たす必要があります。

  • 行為者に不法行為が成立する
  • 監督者に監督義務がある
  • 行為者が無能力者である

責任能力とは

この中で、特に問題になるのは「行為者が無能力者」という点です。通常、人が交通事故などによって他人に迷惑をかけたら不法行為責任を負いますが、不法行為責任を負うためには、「責任能力」が必要です。責任能力とは、だいたい12歳くらいの子ども程度の知能(事理弁識能力)と考えられています。

責任能力のある未成年者の場合、監督者責任は発生しない

そこで、未成年者が12歳くらいを超えた年齢の場合には、未成年者に責任能力が認められます。その場合には、「行為者が無能力者」とは言えないので、親の監督者責任は成立しません。つまり、未成年者が12歳くらいの年齢以下であるか、その程度以下の知能しか有していなかった場合には、監督者責任を追及することによって、親に損害賠償請求ができますが、そうでない場合には、監督者責任が発生しない、という結論になります。

未成年に責任能力がある場合の親の不法行為責任

それでは、未成年者に責任能力がある場合、親が不法行為責任を負うことが一切ないのかとも思えますが、必ずしもそうとは限りません。未成年者に責任能力がある場合であっても、未成年者の不法行為と親の監督義務違反に直接的な関係(因果関係)があったら、親自身に不法行為が成立すると考えられているからです(最判昭和49年3月22日)。

つまり、親の監督義務違反が直接未成年者の交通事故につながったと言えるほどの状況があった場合には、親にも責任を問える、ということです。

たとえば、親子が同居している状況で、親は普段から未成年者が危険な運転をしているのを知っていて、止めようと思ったら容易に止められたはずなのに、あえてそれをせずに放置していて事故が起こったようなケースでは、監督者責任が発生する可能性があります。

ただ、この「直接的な因果関係」というのはかなり限定された状況でしか認められません。未成年者が交通事故を起こしたとき、未成年者に責任能力があると、親に責任追及できる可能性はそう高くはありません。

運行供用者責任か監督者責任か

未成年者が交通事故を起こしたとき、親に対して運行供用者責任か監督者責任のどちらを追求すべきなのでしょうか?

この場合、運行供用者責任が成立する場合であれば、運行供用者責任を追及すべきです。その方が立証が容易で請求が認められやすいからです。親が車を所有しているケースや親が車を管理していたケースでは、運行供用者責任を選択しましょう。

これに対し、車が未成年者所有で親に運行支配や運行利益が認められない場合には、監督者責任が発生しないかどうかを検討すると良いでしょう。物損事故の場合にも運行供用者責任が成立しないので監督者責任を検討する必要があります。このあたりの判断は難しいことがあるので、自分ではどのような対処をすべきかがよくわからない場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

未成年の雇用主

未成年者でも仕事をしていることがあります。高卒なら18歳で就職しますし、学生でもアルバイトをしていることなどがあるからです。この場合には、雇用主に損害賠償請求をすることも可能です。請求の根拠や方法は、上記の「従業員が交通事故を起こした場合の雇用主」の責任と基本的に同様です。そこで、雇用主には、運行供用者責任または使用者責任が発生します。

加害者が未成年者の場合などのケースにおいて、使用者に監督者責任が発生する可能性もあります。たとえば子どもや知的障害者などを雇用していてその知能が12歳程度に満たない場合、被用者には責任能力がありません。その場合、親だけではなく使用者にも民法714条の監督者責任が発生する可能性があります。

共同不法行為者

共同不法行為者とは

交通事故が起こったとき、直接の運転者以外の「共同不法行為者」がいるケースがあります。共同不法行為者とは、直接不法行為をした本人以外の人で、本人と共同して不法行為を行った人のことです。たとえば、一緒に行動をした人や不法行為を手伝った人などがこれに該当します。

交通事故の場合で典型的なのが、飲酒運転のケースです。加害者が飲酒していることを知りながら、同乗者が止めることもなく車に同乗して運転をさせた場合には、同乗者が共同不法行為者と評価される可能性があります。この場合、被害者は運転した加害者本人だけではなく同乗者にも賠償金の支払いを請求することができます。

共同不法行為が成立する場合には、共同不法行為者も本人と同様の責任を負うので、被害者は共同不法行為者に全額の支払い請求が可能です。

共同不法行為と運行供用者責任

共同不法行為が成立する場合には、運行供用者責任も成立することが多いです。どちらも成立するなら運行供用者責任の方が容易に立できることがあるので、どちらか都合の良い方を利用しましょう。

医療ミスに遭った場合の病院、医師

被害者が交通事故でけがをすると、その後病院で治療を受けることが普通です。ここで医療ミスによって症状が悪化した場合などには、医師と自動車の加害者との間に共同不法行為が成立すると考えられています。そこで、医療過誤があった場合には、医師に対して損害賠償請求をすることができますし、医師が病院に雇用されている場合には、病院に対して使用者責任を追及することも可能です。

これらの場合、病院や医師は、加害者と同様、全額の賠償金支払い義務を負います。加害者本人に支払い能力がなくても(少なくても)、病院に資力があれば、賠償金の支払いを受けることができるので、被害者の救済につながることがあります。

事故の原因を作った第三者

交通事故が起こるとき、その原因は自動車の運転者によるものだけには限りません。自動車の運転者以外の第三者によって事故が引き起こされるケースがあります。たとえば、急に歩行者が飛び出してきたために急ブレーキを切らざるを得なくなった場合や、道路上に物が置いてあったために避けようとして事故になったケースなどです。これらの場合には、事故の原因を作った第三者に不法行為が成立するので、それらの人に対し、損害賠償責任を追及することができます。その場合、示談交渉の相手はその第三者となります。

ただし、通常のケースでは自動車の運転者の責任が完全になくなることはないので、相手の保険会社とも話をしながら、同時並行で第三者にも支払い請求をすすめることになるでしょう。

道路や駐車場の管理者

駐車場

道路上や駐車場内で交通事故が起こったときには、道路や駐車場の管理者に責任追及することができる場合があります。この場合の責任を、工作物責任と言います。工作物責任とは、土地上の工作物の占有者や所有者に認められる責任です。まずは占有者に責任が認められ、占有者が相当な注意を払っていた場合には所有者に責任が発生します。

工作物責任が発生する場合は、比較的限定されており、管理義務者や所有者に通常一般に期待される義務を果たしていなかった場合に限られます。たとえば道路に亀裂が入っているにもかかわらず放置していた場合や駐車場内に障害物が放置されているにもかかわらず、速やかに片付けなかった場合に管理者や所有者に責任追及したりすることが考えられます。

国や地方公共団体が管理している道路に問題があって交通事故につながったケースでは、国や地方自治体に対して損害賠償請求(国家賠償請求)をすることも考えられます。

加害者以外と示談交渉をして、確実に損害賠償をしよう

以上のように、交通事故が起こったときには基本的に相手の自動車を運転していた加害者本人に賠償請求をしますが、加害者以外の人に損害賠償ができるケースも意外とたくさんあります。運行供用者責任が発生する場合や使用者責任が発生する場合、未成年の監督者責任が発生する場合や共同不法行為となる場合、道路の管理者に請求できる場合などが考えられます。

ただ、どのような場合でも加害者以外の人に請求できるものではなく、請求が認められるためには、ケースごとに要件を満たしているかどうかをしっかり検討する必要があります。このような法律論は、素人の被害者が正確に理解して当てはめることが難しいことが多いので、弁護士に相談することが役立ちます。

交通事故に遭って、加害者本人以外の人に請求をしたいけれど、実際にできるかどうかがわからない場合には、まずは一度、交通事故に強い弁護士に相談してみましょう。

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