後遺障害の「被害者請求」とは?被害者側から申請手続きを行う方法
この記事のポイント
- 後遺障害の等級が高いほど、損害賠償額が大きくなる
- 「被害者請求」とは、後遺障害の認定を求める手続きを被害者側が行うもの
- 被害者請求のメリットは以下の3点。ただし、作業の手間がかかる
- 示談成立前に自賠責の保険金を受け取れる
- 被害者側が提出書類をコントロールできる
- 過失相殺による保険金の減額が少なくなる
治療が終わる前に、後遺障害の分野に精通した弁護士に相談すべき
なぜ後遺障害の適正な認定が重要なのか
後遺障害の有無や等級が損害賠償額に大きく影響する
交通事故の損害賠償には「後遺障害」という概念があります。これはケガが治った後でも身体に残っている障害のなかで、認定機関が定める条件を満たすもの。一般的な意味の「後遺症」がすべて後遺障害に認められるとは限りません。
この後遺障害の有無や等級(障害の重さを示す指標)は損害賠償額の算出に大きな影響を与えるため、適正な認定を受けることが重要です。
「後遺障害慰謝料」は等級ひとつの違いで数十万円から数百万円変わる!
後遺障害の等級はもっとも重いものが1級、そこから軽くなるごとに級数が増え、もっとも軽い等級が14級です。等級が高いほど、「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」が増えるため、全体の損害賠償額も大きくなります。「後遺障害慰謝料」の場合、等級ひとつの違いが数十万円から数百万円もの差になります。
治療を続けても大幅な改善が見こめなければ、後遺障害の可能性
後遺障害の等級認定を専門機関(損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所)に申請するタイミングは“症状固定”の後です。これは治療を続けても大幅な改善が見こめなくなった状態。この段階になっても残っている症状が後遺症であり、それが自賠責保険上の「後遺障害」に該当するかどうかを審査してもらうわけです。
一般的なむちうち症の場合、事故から6ヵ月後が症状固定の目安
症状固定の時期はケースバイケースですが、一般的なむちうち症(頸椎捻挫、頸部挫傷など)の場合、事故から6ヵ月後がひとつの目安となるでしょう。なお、症状固定後も治療を続けることで痛みやしびれが緩和する場合もあります。
後遺障害の申請手続きは「事前認定」と「被害者請求」の2種類
後遺障害の等級認定を申請する手続きには2つの方法があります。ひとつは加害者側の任意保険会社が行う「事前認定」、もうひとつは被害者側が行う「被害者請求」です。本稿では「被害者請求」にフォーカスをあて、その仕組みを解説していきます。
「被害者請求」3つのメリット
1)示談成立前に自賠責の保険金を受け取れる
そもそも自動車保険制度は「自賠責保険」+「任意保険」という2階建ての構造になっています。自賠責保険とは法律にもとづいて加入が義務づけられている保険。国が定めた最低限の補償のため、通常は「任意保険」によって追加の補償が行われます。
任意保険会社との示談交渉や裁判にじっくり取り組める
したがって、加害者が任意保険に加入している場合は「自賠責保険」と「任意保険」から2種類の保険金が支払われます。「被害者請求」は自賠責保険の支払いを求める手続きなので、任意保険会社との示談交渉や裁判が終わる前に自賠責の保険金を受け取ることができます。
これにより当面の生活費や治療費を確保できるため、任意保険会社との示談交渉や裁判にじっくり取り組めるでしょう。
事前認定では、示談成立後に2種類の保険金が一括で支払われる
「事前認定」の場合、加害者側の任意保険会社が自賠責保険の支払いを請求します(後遺障害の申請手続きを含む)。そして示談交渉や裁判が終わった後、2種類の保険金をあわせた損害賠償金が任意保険会社から一括で支払われます。
2)被害者側が提出書類をコントロールできる
「被害者請求」の場合、すべての提出書類を被害者側で準備することになります。自分たちで必要書類を集める手間はかかるものの、後遺障害の存在を裏づける補足資料を追加できる点が大きなメリットです。
高次脳機能障害やむちうち症などの場合、補足資料が重要に
特に高次脳機能障害やむちうち症は、外観や診断画像だけでは障害の存在を示せないケースがあります。そこで後遺障害の適正な認定してもらうためには、弁護士の陳述書や主治医の意見書といった補足資料が重要になります。
加害者側の任意保険会社にとっては、後遺障害の等級が低いほどいい
一方、「事前認定」は加害者側の任意保険会社による手続きです。後遺障害の等級が低い(または後遺障害に該当しない)ほうが保険金の支払いが少なくなるので、被害者に有利な補足資料を提出してくれません。むしろ、被害者に不利な補足資料(保険会社の顧問医の意見書など)を提出されるおそれすらあります。
3)過失相殺による保険金の減額が少なくなる
原則として、保険金の金額は事故の過失割合によって変動します。たとえば被害者に3割の過失があると、任意保険会社から支払われる保険金も3割減るわけです。これを「過失相殺」とよびます。
しかし、自賠責保険は被害者の保護を目的としているため、過失割合が7割未満の場合は保険金が減りません。7割以上の過失がある場合も、減額割合は2~5割。したがって後遺障害の有無にかかわらず、被害者の過失割合が高い場合は被害者請求をおすすめします。
「被害者請求」のデメリット
提出資料の収集・作成に手間がかかる
「被害者請求」を行う際に必要な提出書類は以下の通りです。この他にも休業損害証明書、通院交通費明細書、レントゲンやMRI検査の画像など、個別の状況によって必要書類が増える場合があります。
書類の発行機関 | 書類名 |
---|---|
加害者が加入している自賠責の保険会社 | ・自賠責保険支払請求書 ・事故発生状況報告書 |
自動車安全運転センター | ・交通事故証明書 |
病院 | ・診療報酬明細書 ・経過診断書 ・後遺障害診断書 |
役所 | ・印鑑登録証明書 ・戸籍謄本 |
「自賠責保険支払請求書」「事故発生状況報告書」は記入の必要あり
提出書類の「自賠責保険支払請求書」「事故発生状況報告書」については、自ら内容を記入しなければなりません。さらに複数の医療機関に入通院していた場合、診断書と診療報酬明細書を集めるだけでも大変な作業です。
後遺障害の分野に精通した弁護士に手続きを依頼すべき
そこで有効なのが「被害者請求」手続きを弁護士に依頼すること。そうすれば、被害者本人が煩雑な作業を行う必要はありません。さらに後遺障害の分野に精通した弁護士の場合、症状に応じた補足資料を収集・作成したり、後遺障害診断書の不備を医師に確認したりしてくれます。
弁護士費用よりも損害賠償金の増額分のほうが大きい
「弁護士に依頼すると多額の費用がかかるのではないか?」と心配する方もいらっしゃるでしょう。でも後遺障害が疑われるような事故の場合、依頼者が損をすることはほとんどありません。なぜなら、弁護士費用よりも損害賠償金の増額分(弁護士に依頼することで得られる経済的利益)のほうが大きくなるからです。
治療が終わる前に弁護士へ相談し、注意点などを確認
専門家に一度も相談しないまま、加害者側の保険会社に手続きをまかせるのは危険です。まずは治療が終わる前に弁護士へ相談し、入通院期間中の注意点や後遺障害の認定手続きなどについて聞いてみましょう。当サイトは「初回相談無料」の法律事務所を多く掲載しています。
- 保険会社の対応に不満がある。
- 保険会社の慰謝料提示額に納得がいかない。
- 過失割合に納得がいかない。
- 後遺障害の認定を相談したい。
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