後遺障害の「等級認定」とは?~交通事故の後遺症が残りそうな方へ~
この記事のポイント
- 「後遺症」と「後遺障害」は違う
- 後遺障害が重いほど、損害賠償額が増える
- 後遺障害の重さは14段階の「等級」で表される
- 治療がひと段落ついた後、専門機関に等級認定を申請する
- 審査対象は提出書類のみ。記載モレや検査モレは厳禁
- 申請から1~2ヵ月後に認定結果が通知される
- 結果に納得いかなければ、異議申し立てができる
おさえておきたい後遺障害の基礎知識
「後遺症=後遺障害」ではない
交通事故の損害賠償には「後遺障害」という概念があります。これはケガが治った後でも身体に残っている障害(後遺症)のなかで、認定機関が定める条件を満たすもの。すべての「後遺症」が後遺障害に認められるわけではなく、以下のような条件を満たさなければいけません。
- 事故の状況と被害者が医師に申告する症状の程度が一致している
- 事故発生当初から医療機関へ定期的に通院している
- 事故当初から被害者が訴える症状が続いており、一貫性がある
- 症状が重いと認められ、日常生活において症状が継続している
- 症状と矛盾のない画像診断や検査結果がある
後遺障害が重いほど、「後遺障害慰謝料」などの損害賠償額が増える
そして「後遺障害」の有無と重さが損害賠償額に大きな影響を与えます。特に後遺障害に関連する損害項目は、後遺障害慰謝料(後遺障害を負った精神的苦痛に対して支払われる賠償金)と逸失利益(後遺障害がなければ得られるはずだった収入・利益)。後遺障害が重いほど、これらの金額は高くなります。
後遺障害の重さは14段階の「等級」に大別される
では、後遺障害の重さはどのように判断(認定)されるのでしょうか?交通事故の状況は千差万別であり、それによって残った症状も一人ひとり異なります。すべての後遺障害を細かく判断するのは非常に手間がかかるため、重さを14段階に大別した指標が定められています。それが後遺障害の「等級」です。
もっとも重い等級が1級、もっとも軽い等級が14級
後遺障害の等級はもっとも重いものが1級、そこから軽くなるごとに級数が増え、もっとも軽い等級が14級です。1級と2級は「要介護のもの」と「要介護でないもの」の2種類があるため、全体では16パターン142項目に大別されます。2つ以上の後遺障害が残っている場合、「併合」として等級がくり上がるケースもあります。
後遺障害の「等級認定」が重要な理由
等級ひとつの違いが損害賠償額を大きく左右する
「後遺障害慰謝料」の場合、等級ひとつの違いが数十万円から数百万円もの差になります。したがって、適正な損害賠償を受けるためには後遺障害の適正な“等級認定”を受ける必要があります。
後遺障害を認定するのは病院でも保険会社でもない
後遺障害の有無や等級を審査するのは、病院でも保険会社でもありません。損害保険料率算出機構の「自賠責損害調査事務所」という専門機関です。治療を続けても大幅な改善が見こめなくなった後(症状固定の後)、この機関に後遺障害の等級認定を申請します。
症状固定の時期はケースバイケースですが、一般的なむちうち症(頸椎捻挫、頸部挫傷など)の場合、事故から6ヵ月後がひとつの目安となるでしょう。
等級認定を申請する手続きは「被害者請求」がベター
後遺障害の等級認定を申請する手続きには2つの方法があります。ひとつは加害者側の任意保険会社が行う「事前認定」、もうひとつは被害者側が行う「被害者請求」。各手法のメリット・デメリットは他のコラムでくわしく解説しますが、提出書類を被害者側が準備できる「被害者請求」をおすすめします。
申請時に必要な提出書類
等級認定の申請に必要な提出書類は以下の通りです。この他にも休業損害証明書、通院交通費明細書、レントゲンやMRI検査の画像など、個別の状況によって必要書類が増える場合があります。
書類の発行機関 | 書類名 |
---|---|
加害者が加入している自賠責の保険会社 | ・自賠責保険支払請求書 ・事故発生状況報告書 |
自動車安全運転センター | ・交通事故証明書 |
病院 | ・診療報酬明細書 ・経過診断書 ・後遺障害診断書 |
役所 | ・印鑑登録証明書 ・戸籍謄本 |
審査対象は提出書類のみ。補足資料がポイントになることも
提出書類に記されていない情報は、たとえ事実でも審査の対象になりません。したがって、医師が作成する「後遺障害診断書」の詳細な記載が重要です。また、提出が義務づけられている書類以外にも補足資料(主治医の意見書や弁護士の陳述書など)を提出したほうがいいケースがあります。
等級認定手続きの流れと注意点
申請から1~2ヵ月後に結果が通知される。再審査の請求も可能
等級認定の申請から結果が出るまでの期間は1~2ヵ月ほど。そして後遺障害の等級に応じて、後遺障害慰謝料などの賠償額が算定されます。もしも認定結果に納得いかなければ、認定機関に異議を申し立てること(再審査の請求)が可能です。
新たな検査結果や医師の意見書などの追加資料を提出
ただし、最初の申請時と同じ書類を提出しても、結果は変わりません。新たな検査結果や医師の意見書などの追加資料を提出して、納得いく等級認定を求めることになります。こういった資料の作成・収集には専門知識が必要なため、後遺障害の分野に精通した弁護士への相談をおすすめします。
異議申し立てや裁判で認定結果が変わる可能性は低い
異議申し立てが認められる可能性は個別のケースによって異なりますが、一般的に高くありません。裁判で等級認定を争うことも可能ですが、異議申し立てよりも難易度が高いでしょう。そのため、入通院期間中から後遺障害の認定を見すえて行動することが重要です。
適正な認定を受けるため、通院期間中に専門家へ相談を
たとえば「仕事が忙しいから」といって、痛みをガマンして通院をおこたってはいけません。定期的に通院しなければ、後遺障害にあたらないと判断される可能性が高くなります。他にも個別の状況によって注意すべきポイントがあるので、くわしくは専門家のアドバイスを受けてください。
- 保険会社の対応に不満がある。
- 保険会社の慰謝料提示額に納得がいかない。
- 過失割合に納得がいかない。
- 後遺障害の認定を相談したい。
「交通事故の後遺障害」記事一覧
- 2016年6月15日
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