後遺障害の認定結果に不服があれば「異議申し立て」を検討!
この記事のポイント
- 後遺障害の等級によって損害賠償額が変わる
- 後遺障害の認定結果に不服があれば、異議申し立てができる
- まずは「認定理由書」「後遺障害診断書」「検査資料」を確認する
- 異議申し立てを検討する場合は、実績のある弁護士に相談する
- 後遺障害の等級を裁判で争うのは最終手段
後遺障害の「等級認定」が重要な理由
「後遺症」と「後遺障害」は少し違う
一般的な意味での「後遺症」と法律上の「後遺障害」は定義が異なります。交通事故によるケガが治った後でも身体に残っている障害(後遺症)のなかで、認定機関が定める条件を満たすものを「後遺障害」といいます。そして、後遺障害の有無と等級(重さを示す指標)が損害賠償額に大きな影響を与えます。
等級ひとつの違いが損害賠償額を大きく左右する
たとえば「後遺障害慰謝料」の場合、等級ひとつの違いが数十万円から数百万円もの差になります。したがって、適正な損害賠償を受けるためには適正な「等級認定」を受ける必要があるわけです。
もっとも重い等級が1級、もっとも軽い等級が14級
後遺障害の等級はもっとも重いものが1級、そこから軽くなるごとに級数が増え、もっとも軽い等級が14級です。1級と2級は「要介護のもの」と「要介護でないもの」の2種類があるため、全体では16パターン142項目に大別されます。
後遺障害を認定するのは病院でも保険会社でもない
後遺障害の有無や等級を審査するのは、病院でも保険会社でもありません。損害保険料率算出機構の「自賠責損害調査事務所」という専門機関です。治療を続けても大幅な改善が見こめなくなった後(症状固定の後)、この機関に後遺障害の等級認定を申請します。
「異議申し立て」の基礎知識
申請から1~2ヵ月後に結果が通知。再審査の請求も可能
等級認定の申請から結果が出るまでの期間は1~2ヵ月ほど。認定された後遺障害の等級に応じて、後遺障害慰謝料などの賠償額が算定されます。しかし、認定結果そのものに納得いかない場合は泣き寝入りするしかないのでしょうか?
いえ、決してそうではありません。後遺障害の等級認定に不服がある場合は、異議申し立て(再審査の請求)を行うことができます。
新たな資料を提出しなければ、異議申し立てをしても結果は同じ
ただし、最初の申請時と同じ書類を提出しても結果は変わらないでしょう。したがって、新たな検査結果や後遺障害診断書、医師の意見書といった追加資料を提出して、納得いく等級認定を求めることになります。
なお上記のような資料を収集するためには、検査や通院などの費用がかかります。手続きの手間もかかりますので、まずは以下3点を確認のうえ、異議申し立てを行うかどうかを検討してください。
異議を申し立てる前に確認すべき3つの書類
1) 認定理由書
自賠責保険による後遺障害の認定結果には、結論にいたった「理由書」が添付されています。その内容を分析し、結論をくつがえす新たな資料を用意できるかどうか検討しましょう。
2) 後遺障害診断書
診断書の記載内容が十分かどうか、適切な表現がされているかを確認してください。たとえば、実際に感じている「自覚症状」と後遺障害診断書の記述にズレが生じているかもしれません。また、「障害内容の増悪・緩解の見通し」について希望的観測が書かれていたり、空欄のままだったりするケースがあります。
3) 検査資料
レントゲンやMRIといった基本的な検査は受けていても、症状に応じた専門的検査を受けていない場合があります。たとえば、むちうち症(頸椎捻挫、頸部挫傷など)の疑いがある場合、ジャクソンテストやスパーリングテストなどの神経学的テストを追加で行ったほうがいいでしょう。
異議申し立ての成功確率を高めるポイント
後遺障害に認定されるための5つの条件
後遺障害に認定されるためには、原則として以下5つの条件を満たす必要があります。もし当初の認定結果が「非該当(後遺障害にあたらない)」だった場合は、以下5点を満たす資料を用意できるかどうかを確認してください。
- 事故の状況と被害者が医師に申告する症状の程度が一致している
- 事故発生当初から医療機関へ定期的に通院している
- 事故当初から被害者が訴える症状が続いており、一貫性がある
- 症状が重いと認められ、日常生活において症状が継続している
- 症状と矛盾のない画像診断や検査結果がある
上記5点のうち(1)(2)(3)は入通院期間中のポイントのため、後になってやり直すことはできません。しかし(4)(5)については、追加検査や補足資料の提出によって認定機関の判断が変わる可能性があります。
異議申し立ての実績豊富な弁護士に相談
異議申し立ての成功確率を高めるためには、後遺障害認定に関する専門的知識が必要です。特に「認定理由書」や「後遺障害診断書」の分析は医師に依頼できないため、後遺障害の分野に精通した弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士選びのポイントは「異議申し立てが認められた実績があるかどうか」。一般的に異議申し立てが認められるケースは少ないため、複数の実績があれば信頼できるでしょう。
「被害者請求」手続きで異議申立書と添付資料を提出
認定結果をくつがえせる見こみがある程度立てば、追加検査や診断などを実施します。場合によっては病院からカルテを取り寄せたり、専門医に意見書を作成してもらったりして新たな資料を収集。「被害者請求」手続きを使って、加害者側の自賠責保険会社に異議申立書と添付資料を提出します。
異議申立書の記載内容とは?
異議申立書では、後遺障害の認定理由に対する反論を記載します。決まった書式はありませんが、以下に基本的な構成を示します。
- 認定結果の結論と理由の問題点
- 等級認定の変更を請求
- こちら側の請求の正しさを裏づける資料
- 症状や治療の経過
- 自賠責の後遺障害認定基準
- 自覚症状
- 自覚症状を裏づける他覚的所見(検査結果に基づく医師の見解)
- 医学的証拠の引用
- 被害者の状況(自覚症状、仕事や生活への影響など)
- 自賠責の後遺障害認定基準へのあてはめ
- 結論(当方の請求)
審査期間は約2~6ヵ月
再審査の請求から結果が出るまでには、2~6ヵ月ほどかかります。異議申し立ての回数に制限はありませんが、新たな医学的証拠を提出しなければ2度目以降の結果は変わらないでしょう。
「異議申し立て」以外に後遺障害の認定結果を争う方法
自賠責紛争処理機構への申請
「自賠責紛争処理機構」とは、自賠責保険の支払いに関する紛争の調停などを行う第三者機関。原則として、異議申し立てが認められなかった場合に申請を行います。ここでは、被害者が提出する資料、保険会社からの説明・提出資料、機構が独自に収集した資料によって書面審査が行われます。
裁判(訴訟を起こす)
最終手段として、裁判という選択肢があります。基本的に裁判所は、自賠責で認定された後遺障害の等級を尊重します。ただし、自賠責の認定手続きよりも豊富な資料に基づいて判断するため、弁護士の立証や追加資料などによって等級が変わる可能性も。後遺障害の等級を裁判で争うかどうかについては、弁護士に相談することをおすすめします。
- 保険会社の対応に不満がある。
- 保険会社の慰謝料提示額に納得がいかない。
- 過失割合に納得がいかない。
- 後遺障害の認定を相談したい。
「交通事故の後遺障害」記事一覧
- 2016年6月17日
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