【むちうち症の損害賠償で請求できる項目】 金額の大きな慰謝料を徹底解説!
この記事のポイント
- むちうち症の損害賠償項目は「治療関係費」「通院交通費」「休業損害」「入通院慰謝料」など
- 後遺障害に認定されると「逸失利益」「後遺障害慰謝料」も支払われる
- 損害賠償金のなかで大きな割合を占めるのは「慰謝料」
- 慰謝料の算定基準は3種類あり、「裁判基準」による金額がもっとも高い
- 保険会社は金額の低い基準で算定した慰謝料を提示してくる
- 裁判基準の慰謝料を得るためには、保険会社との交渉や裁判を弁護士に依頼
目次
交通事故で多いケガ「むちうち症」とは
首や肩の痛み、手足のしびれ、頭痛、耳鳴り、めまいなど
交通事故によるケガのなかで多いのが「むちうち症」です。頭部が“むち”の動きのように前後に屈伸し、首周辺の筋肉やじん帯が損傷したために起こる首や肩の痛み、手足のしびれ、頭痛、耳鳴り、めまいなどの症状をさします。
「むちうち症」は俗称。医学的には複数の傷病にわかれる
ただし、「むちうち症」は俗称。医学的には「頸椎捻挫」「頸部挫傷」「外傷性頸部症候群」といった傷病名になります。これらの症状が発生した場合、どのような損害賠償を請求できるのでしょうか?そこで「傷害事故の損害賠償項目」を以下に記します。
傷害事故の損害賠償項目
積極損害 |
・治療関係費(治療費、入院費など) ・通院交通費 ・付添看護日 ・入院雑費 ・器具などの購入費 ・将来の手術費・治療費・雑費など ・弁護士費用(訴訟を起こした場合) |
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消極損害 |
・休業損害 ・逸失利益(後遺障害に認定された場合) |
慰謝料 |
・入院と通院に対する慰謝料 ・後遺障害に対する慰謝料(後遺障害に認定された場合) |
---|
事故の損害は「積極損害」「消極損害」「慰謝料」に大別
上記の「積極損害」とは、事故のせいで被害者が支出した損害のこと。治療費や通院交通費など、実際に支払ったお金と同額の損害賠償金が支払われます。
次の「消極損害」とは、事故にあわなければ被害者が得るはずだった(と予想される)利益のこと。ケガのせいで仕事ができずに減ってしまった収入(休業損害)などが補償されます。
後遺障害に認定されると、将来の減収分が支払われる
むちうち症が後遺障害に認定された場合、消極損害として「逸失利益」が支払われます。これは後遺障害がなければ得られるはずだった利益のこと。具体的な計算方法については以下の記事を参照してください。
慰謝料とは精神的・肉体的苦痛に対する補償金
「入通院」と「後遺障害」に対する慰謝料
損害賠償金のなかで大きな割合を占めるのが「慰謝料」です。これは事故が原因で負った精神的・肉体的苦痛に対する補償金のこと。これまでに紹介してきた“財産的損害(積極損害・消極損害)”ではなく、“精神的損害”に分類されます。
入通院慰謝料は必ず支払われる。後遺障害慰謝料は認定次第
むちうち症に関する慰謝料は、以下の2種類があります。必ず支払われるのが(A)入通院慰謝料。くわえて、後遺障害に認定されると(B)後遺障害慰謝料が支払われます。
(A)入通院慰謝料
交通事故が原因で入院、または通院を強いられた際の精神的・肉体的に苦痛に対する慰謝料です。その金額は治療日数やケガの程度などに応じて決まります。
(B)後遺障害慰謝料
交通事故が原因で後遺障害が残った際の精神的・肉体的に苦痛に対する慰謝料です。その金額は後遺障害の等級(重さを表す指標)に応じて決まります。
慰謝料の金額を決める3つの基準
慰謝料の金額を決める基準は、以下の3種類があります。同じ条件でも各基準によって慰謝料の金額が異なるので、注意してください。
① 自賠責保険基準
自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)は法律にもとづく強制加入保険です。国が決めた必要最低限の補償のため、3つの基準のうちでもっとも低い金額になります。
② 任意保険基準
それぞれの任意保険会社が独自に定めた基準です。内容は保険会社ごとに異なりますが、自賠責保険の基準よりも少し高い程度。加害者が任意保険(いわゆる自動車保険)に加入していると、原則としてこの基準による慰謝料が提示されます。
③ 裁判基準(弁護士基準)
過去の判例で認められた金額にもとづき、弁護士が任意保険会社と交渉するときに使用する基準です。いちばん金額が高く、法的に適正な基準です。裁判になれば、この基準をもとにした慰謝料が支払われます。
入通院慰謝料の相場-①自賠責保険基準
治療日数×4,200円
日本の自動車保険制度は「自賠責保険」+「任意保険」という2階建ての構造になっています。1階部分の自賠責保険は、法律にもとづいて加入が義務づけられている保険。加害者の車両が無車検や車検切れでない限り、確実に保険金が支払われます。
治療日数とは「治療期間」または「実通院日数」
この自賠責保険の基準において、入通院慰謝料は「治療日数×4,200円」と定められています。治療日数とは(A)治療期間と(B)実通院日数のうち、短いほうの日数をさします。
(A)治療期間=事故から症状が完治するまでの期間、または症状が固定する(治療を続けても大幅な改善が見こめなくなった状態)までの期間
(B)実通院日数=(入院日数+通院日数)×2
整骨院への通院も「通院慰謝料」の対象
整骨院や接骨院への通院も、慰謝料の算定における「通院日数」として認められます。ただし、治療継続の必要性を判断したり、後遺障害診断書を作成したりするのは病院の医師です。したがって、整形外科での診断を定期的に受けてください。
自賠責保険の支払いは最大120万円(後遺障害でない場合)
自賠責保険から支払われる損害賠償金には上限があります。後遺障害でないケガの場合は最大120万円。これは治療費や通院交通費、休業損害など他の賠償項目も含めた総額なので、上記基準よりも入通院慰謝料が少なくなる可能性があります。
入通院慰謝料の相場-②任意保険基準
自賠責保険の金額に少し上乗せした程度
自賠責保険は法律で定められた最低限の補償にすぎません。そこで(事故の加害者が任意の自動車保険に加入していれば)任意保険会社から自賠責保険を補う慰謝料が支払われます。その相場は自賠責保険の基準に少し上乗せした程度です。
入通院慰謝料の相場-➂裁判基準
自賠責保険の金額の2倍前後
「裁判基準」とは、訴訟を起こした際に支払われる慰謝料の基準です。金額の目安は自賠責保険基準の2倍前後。入院期間と通院期間に応じて一定の基準が定められており、ケガの程度や通院頻度によって金額が変動します。
軽度のむちうち症は後遺障害に認定されづらい
後遺障害に認定されるための5つの条件
後遺障害の有無や等級を審査するのは、損害保険料率算出機構の「自賠責損害調査事務所」という専門機関です。ここで後遺障害に認定されるためには、原則として以下5点の条件を満たす必要があります。
- (1)事故の状況と被害者が医師に申告する症状の程度が一致している
- (2)事故発生当初から医療機関へ定期的に通院している
- (3)事故当初から被害者が訴える症状が続いており、一貫性がある
- (4)症状が重いと認められ、日常生活において症状が継続している
- (5)症状と矛盾のない画像診断や検査結果がある
画像検査で異常を確認できるケースは少ない
軽度のむちうち症の場合、最後の条件を満たすのは容易ではありません。レントゲンやMRIなどの画像検査によって異常を確認できるケースが少ないため、医学上の客観的な証拠を示せないのです。
むちうち症で認定される後遺障害は12級または14級
12級13号 局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号 局部に神経症状を残すもの
後遺障害の等級はもっとも重いものが1級、そこから軽くなるごとに級数が増え、もっとも軽い等級が14級です。そのなかで「むちうち症」に対する後遺障害の等級は上記の2種類。それぞれの定義と認定されるためのポイントを説明します。
画像検査で異常が見つかれば、12級の可能性大
後遺障害12級が認定されるためのポイントは、痛みやしびれなどの症状の原因を医学的に証明すること。レントゲンやMRIなどの画像検査で異常が見つかれば、12級に認定される可能性が高くなります。
また「スパークリングテスト」や「ジャクソンテスト」といった神経学的な検査の結果次第では、12級に認定される可能性があります。
14級が認められるためには、定期的かつ継続的な通院が必要
痛みやしびれなどの症状の原因を医学的検査で客観的に証明できなくても、後遺障害14級に認定されるケースがあります。その際に必要なのは前述した(1)~(4)の条件を満たすことです。定期的かつ継続的に通院し、一貫した自覚症状をカルテや診断書などの記録に残してもらいましょう。
後遺障害慰謝料の相場-①自賠責保険基準
後遺障害14級/32万円
後遺障害12級/93万円
後遺障害慰謝料は、後遺障害の等級に応じて決まります。そして、むちうち症で認定される可能性のある等級は14級か12級。自賠責保険による慰謝料の金額は14級で32万円、12級で93万円と定められています。
自賠責保険の支払いは最大224万円(後遺障害12級の場合)
後遺障害が残った場合も、自賠責保険から支払われる損害賠償金には上限があります。その金額は14級で最大75万円、12級で最大224万円。これは治療費や通院交通費、休業損害など他の賠償項目も含めた総額なので、上記基準よりも入通院慰謝料が少なくなる可能性があります。
後遺障害慰謝料の相場-②任意保険基準
自賠責保険の金額に少し上乗せした程度
入通院慰謝料の際と同じく、任意保険基準の後遺障害慰謝料は自賠責保険に少し上乗せした程度です。「裁判基準」による金額よりも大幅に低いので、安易な示談はおすすめできません。
後遺障害慰謝料の相場-➂裁判基準
後遺障害14級/110万円
後遺障害12級/290万円
裁判基準による後遺障害慰謝料は、14級で110万円、12級で290万円。これは自賠責保険基準の約3倍にのぼります(すべての等級で約3倍になるわけではありません)。
適正な損害賠償金を得るためには
Point1/後遺障害の適正な等級認定を受ける
ここまで解説してきたように、損害賠償金に大きな影響を与えるポイントは2つあります。ひとつは、後遺障害の適正な等級認定を受けること。そのためには、後遺障害の分野に精通した弁護士に依頼することをおすすめします。
通院のアドバイス、後遺障害診断書の確認といった弁護士のサポート
弁護士からは通院に関するアドバイスのほか、治療打ち切り要請への対応、後遺障害診断書の確認、等級認定の申請手続きなど、総合的なサポートが受けられるでしょう。ただし、すべてのむちうち症が後遺障害に認定されるわけではありません。
Point2/裁判基準による慰謝料を請求する
もうひとつのポイントは、裁判基準による慰謝料を請求することです。しかしながら、被害者が加害者側の保険会社と交渉しても、裁判基準による金額は提示されません。訴訟を起こせる弁護士が交渉することによって、初めて保険会社が裁判基準に近い慰謝料を提示してきます。
保険会社の説明をうのみにしてはいけない
適正な損害賠償金を得るためには、保険会社の説明をうのみにしてはいけません。たとえば「これが最大限の金額」といった説明は「任意保険基準では最大限の金額」という意味なのです。
無料の法律相談を活用し、慰謝料の増額見込みを確認
したがって、まずは弁護士に相談して、裁判基準で算定した慰謝料を確認してください。最近は初回相談無料の法律事務所が増えているので、慰謝料の増額見込みについても無料で教えてくれるでしょう。
- 保険会社の対応に不満がある。
- 保険会社の慰謝料提示額に納得がいかない。
- 過失割合に納得がいかない。
- 後遺障害の認定を相談したい。
「交通事故の慰謝料」記事一覧
- 2016年7月5日
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